第49話 サイボーグとの戦い
何もかもが異常だった。それに圧倒されてしまう。これじゃあもうハッタリなんて通用しないだろう。俺は土俵の周辺にすら近寄れないで終わってしまったのを確信した。
だから、といって、このまま終わる、だなんてできるはずもなく。
「目が赤くなるとかっ!」
首にぶら下げていた
この黄金の棒型の
その状態で
尚、エネルギー切れとなった
「
リンはマッチの先端などに使われている物質であることから燃えやすい。これを使って何をするかといえば、定番の炎による攻撃……ではなく、あのサイコレディをマッチサイボーグにしてやろうというのだ。
もちろん、炎を生み出すこともできるが、それには複数の
現在は【エアー】、つまり風の
ライターの火は飛ばないからね、仕方がないね。
この生み出したリンだが、もちろん飛ばない。ではどうするかといえば地面にばら撒く。
これは設置型のトラップと思えば分かりやすいだろう。そこに踏み込んだ瞬間に
後は【ファイア】を起動させ着火させれば大ダメージを与えられる……かもしれない。
我ながら行き当たりばったりではあるが、相手が相手なので何をやっても期待する結果に反らないと思うので誤差の範疇、ということにしておく。
ゆらり、と
突風が俺を突き飛ばす。思わず「ひゃん」という悲鳴が口から洩れた。
なんということだ。俺はこんな悲鳴を上げる存在になってしまったというのか。今まで意識したことが無かったが、女になるということはこういうことだったとでもいうのか。
このナナシ、一生の不覚っ。
心までもが女体化してきている? これは心を引き締めなくてはならない案件っ!
「ターゲット捕獲……」
突風の正体は言わずもがな
背にゴリラのような手を回され支えられる。金属の冷たさが薄い布地を通して伝わって来て鳥肌が立った。
言うなれば感情のあるサイボーグから、プログラムを実行するだけのロボットになったかのような無機質さがあった。
「このっ」
全力で平手打ち。狙うは
ぷにっ。
「損傷無し」
「うるせぇっ、言われんでも分かってらいっ」
それは平手打ちには程遠い威力でありました。俺の筋力、無さ過ぎ問題。
「ぱおーんっ!」
そこに突き抜ける
だが、これを
大きくはないが、しっかりとした柔らかさを感じるナイスおっぱいです。
いやいや、そうじゃない。堪能している場合かっ。
「YAGレーザー起動っ」
イットリウム・アルミニウム・ガーネットの
黄金の棒から伸びる固体レーザーの一撃は、案の定、回避されてしまいましたとさ。あまり燃費が良い方ではないから、何度も使えないんだぞこれ。当たってくれよなぁ。
しかも、回避するのに俺を突き飛ばす方法を取ったもので俺は尻もちを突く羽目に。地味に砂地が衝撃を緩和してくれている。そして、尻の周りにはわさわさと草が生えた。いつもより草どもが活発なのが腹立たしい。
何か? お前らは足よりも尻の方が良いのか? おぉん?
「ハイランク
「冗談じゃないっ! ヘリウム起動っ!」
非常に安定して軽いのが特徴の気体ヘリウム。その特性を俺自身に付与して後方に跳躍。ふわり、と宙に跳んで行く。
とはいえ、空を飛ぶことができるわけではない。重力によってゆっくりと地面へと落ちてゆくのだ。月面での活動っぽい現象だ、と俺は感じた。
宙に浮いている間は無防備になるが十分に距離と時間は稼げているだろう。その間に次の準備を済ませる。
この間、パオーン様が何もしないわけもなく。だからこそ、この回避方法を選択した。
「ぱーおーんっ!」
乱れ生える
機械化された脚部から輝く粒子のような物が確認できる。巻き上がっている砂は推力の影響を受けている証だろう。考えられることはホバークラフトによる移動。
だが、それだけではないような気がする。あの細い脚部で彼女を浮かせるにはパワーが足りない気がするのだ。
「おまえは捕獲対象ではない」
ガシャン、と
それはきっと放熱板なのだと思う。それから想像できることは……連射。
「消えろ」
手首が高速回転し、そこから恐ろしい速度で光弾が連続発射される。ガトリング砲だ。
一部の隙間もない連射は回避など不可能。加えて取り回しが良いとくれば、回避できる理由が見当たらなくなる。
「
ならば壁を作る。植物の壁だ。砂の中から肉厚の蔦が幾つも生え出し光弾を弾き飛ばす。
しかし、
やがて、堪え切れなくなる植物の壁。時間にして5秒持ったかどうか。でも、パオーン様にとってはそれで十分だったようで。
恐らく、植物の壁に護られている間に地中に潜って
いずれにしても、やることが無茶苦茶である。
「アシスタントしてやるっ! ネオジム起動っ!」
通常、
その条件とは対象の波長を
この条件は先ほど俺が
「っ!?」
彼女を磁石人間にしたことにより、その強力な磁力でもって砂漠の砂に混じっている砂鉄が引き寄せられてゆく。結構な量があったのか瞬く間に黒い人型の何かに変貌した。
これならば、砂鉄の重さで思うように動けまい。叩くなら今だ。
「ぱおーんっ!」
パオーン様も「獲った!」とでも言ったのだろう。俺も大金星を取ったと確信する。
「スレイブニール、解禁。
だが、そうはならなかった。俺たちは眠れる凶獣を目覚めさせただけだったのだ。
誰も乗っていないであろう蒼い戦車。その砲塔が動き、パオーン様に目掛けて砲撃が開始されたのだ。
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