好かないやり方だ/想起の図書館その8
『伝令です。図書館の復旧システムが作動しました』
復旧されていく。人影や、空中には詠唱の文章でも書かれている文字列が焼き払っていった図書館を立て直していく。こんな仕組みが存在するなんて全く思わなかった。ヘレナ先生はとんでもない運用をするな……これがグランド・マスターのやることなのか……?
さてと、俺の読みが正しければそろそろ来るはずなんだが……
俺の拘束の魔術で展開した縄が検知し、この出口の近い地点にて向かってくるのは敵しかいないだろう。
「終わりだな」
張り詰めた網に向かって敵は突っ込む。拘束されて動けなくなることを理解していないが、まぁ俺には関係ない話だ。
「多分俺が考えるにお前が主犯かと思うが違うか?」
「知るか!」
敵の身体が炎上するところを水のエーテルを流し込み防ぐ。俺の考察では今回の図書館でのテロは主犯格がエーテルでの炎上をして感知できない状態に持ち込んでいくのが主だった作戦だったのだろう。だけども、俺も何も考えないわけではない。自分の拘束の魔術で展開する縄を張り巡らせている。これは物理的なアプローチだ。エーテルで感知するわけではない。だからこれはいける。
「ちッ」
「適当な人形に渡したいけどもなんかやらかす可能性があるから微妙だな……」
他の人達に合流できるようにするために引き釣りながら歩いていく。復旧した図書館の綺麗さ、まるで世界から自分とこの捕まえたヤツ以外しかいないじゃないかという終末世界を歩いているような錯覚をさせられる。なんというかすごく心地が良いと言うか、既視感を感じる。
「なんでお前らは、図書館なんてものを守る。この世の中は腐ってるだろ!」
さっきからずっと喚いている。俺には別にそんなことは興味がない。腐っているように思えるお前から見える世界は俺にとっては別の形に見えるだけだということ。
「腐ってようが少なくとも燃やして感情を晴らすことしか出来ない奴らは嫌いだよ。感情なんかで解決出来ると考えてる人はよろしくない。結局の所、人を救えるのは仕組みだ。仕組みによって人は狂っておかしくなっていく」
いくつかの最悪の日を思い出す。俺の考えはそこからやってくる。図書館の復旧する際にいろんな英雄と呼ばれるような存在、空想上の存在が溢れようとも、そこから救えるのはいわゆる”正義”に属する人なんだろうよ。外れてしまった人間には救えるか?俺にはそこから信じられない。だから、俺は仕組みで対処する。システムにすることによって、考えうる不幸せを強制力で潰していく。
だから、この図書館の復旧システムは目的は素晴らしいが、やり方は好きではない。
「モルドレッド!無事だったか!」
アーサーが呼ぶ声が聞こえる。他の人達も集まっている中で捕まえたのを引き渡す。
「図書館の復旧システムってどういうことなんだ?」
パーシヴァルが答え始める。
「この図書館は、言ってしまえばエレナ先生の所有物です。ここにあるものはエレナ先生のエーテルの支配下に置かれているのですよ」
結構広いし、本の数も多かろうに。
「もちろん、常時全てを感知しているわけではないのですがこうして緊急時にはエーテルを流し込むことで復旧することが出来ます」
エーテルの性質から考えるにある時の図書館なんだろう。いや俺の付与の上位互換というか……付与をするための元を作る際に結構時間がないと記録できないだけども、この規模の本や建物となるとできるのか……
「それ、俺の付与よりもやばくないか?正直エレナ先生の下位互換って気がしてきたんだが」
「私はモルドレッドさんの付与を知っているわけではないですが、これは仕組みとしてはエレナ先生はシステムを復旧しただけです。システム自体は別の人が設計したもので……それに復旧には読み手、利用したことのある人達のエーテルを流し込まないとダメなのです。あくまでも復旧するというのは、普段利用している人から微量のエーテルを聴取してそれに呼応する形です」
効力は近いがそこに至るまでのルールは違うってことか。
「……なんでパーシヴァルは知っているんだ」
「私はこの手の仕組みには縁があるので。それに詳しいわけではないです。知っていただけなので、それ以上のことは」
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