反省回withサンドイッチ/想起の図書館その3

「ということで反省会やりまーす」


 大学近くのカフェにてさっきの模擬戦の反省会を行う。今日の昼ごはんはそこなサンドウィッチである。


「はいまずはガレスを完全に封じきったハーンはうちらの中で完全にMVPだと思います」


「えっ!?でも負けちゃったら意味ないですし。MVPだなんて」


「いや、完全にガレスの槍のギミック看破しての攻略で決着付けたのはすごい」


 ハーンの技術マジでどういった技術なのかそこが全然見えない。いや、電脳技術かじりつつあるから、おそらくはパラメータを振り分けてなんだろうけども、あんなにも制御出来るものなのか……?それこそ、マジで身体まで弄る狂人だと出来ちゃうだろうけども、そんな狂人じみたものって日本人というか電脳を使っている人は倫理のあり方というのが違うってことなのか、ハーンが例外なのか。全然分かりやしない。


「俺の反省点は完全にトリスタン抑えきれなかったことだな……」


「まぁ、そうなっちゃうのかな。正直、対人特化で磨き上げているから真っ向勝負でやり合うのはキツかった感じだよね……ハーンにぶつけてメタ張るのが一番だと思いました。うん。最初からそうするべきでした。それを押し通す前提で動くってのはありだった」


「僕的にはトリスタンの弓はマジでズルすぎないかってぐらいヤバヤバだったよね!」


 ただ、僕自身はトリスタンのことはそこまで深くは知っておらず、きっちり戦うのは今回が最初だったけども、アレは対人に絶対に負けたくがないが故の戦法だと考えた。


 機動力の風のエーテルを常に全開にして、ヒットアンドアウェイ。魔術師との戦闘の基本である相手のエーテルを使えなくするといったことを全力で磨き上げている。正直なところ、タイマンでは絶対張り合いたくない。


「こればっかりは俺ももっと手数をな……遠距離対策考えておく」


「すいません。純粋に疑問なんですが、モルドレッドさんの銃とトリスタンさんの弓、後はランスロットさんも銃使っていましたけども武器事情とか知りたいですね」


 ハーンは定期的に質問を投げかける。


「エーテルの込める難易度的な問題だね。銃は使いやすいし、取り回しがいいけどもエーテルを込める猶予時間が少ないし繊細なコントロールも出来ない。弓はその逆、取り回しは微妙だけどもエーテルに関してはかなり緻密にこなせる」


 まぁ、だから弓使いって結構シビアで使い手が少ない。ランスロットさんほどの実力者でも銃の方を取っている。まぁ、アレは多分自前の発展魔術との相性が考えられるが。


「僕はあの人形で数的猶予を抑えるべきだった感じかな」


「まぁ、あの後から人形追加で動かすのはタチ悪いというかどうやって動かしているだよって話だけども。ホームズは、トリスタン対策に防壁を張るの精一杯で攻撃に転じることが出来なかったな。全体的に思うけども、俺達は数的に劣っていたわけだし、短期決戦で押し込んでしまうべきだった。そうなると例えば、火のエーテルバフで全開にしてさっさと火力で押し切るという手段もあった」


 サンドイッチの残りを胃の中に押しこめて、コーヒーも飲み干す。


「……みんなに支援掛けるエーテルも限度あるからこれからもみんなと戦うならもっと鍛えておくね」


 こうして色々考えながら食事するというのも悪くない。なんなら初めての感覚。


「俺達もこれから何度もやっていくならこの4人での強みって言うのも意識したほうが良いのかもな」


「型を決めて戦いの盤面を無理やりこっちに持っていくというのは、私もないわけではないのですが」


 ハーンの戦いの手数鬼ヤバい。バトルジャンキーって感じがする。


「あっ、魔術師はよく分からないですけども、詠唱とかどうしています?」


「詠唱は戦闘ではまぁ使われない感じだよね」


「あーそうなんですね。電脳使っているとここ一番時には心を整えるって意味で使ったりするですけども」


 これは勉強したな。電脳は身体に流れる信号を使うから、感情に高められるとノイズが発生してしまう。それをなくすためのルーティンとして詠唱するのか。


「あっでも、工房設営の講義をとった際では詠唱しましたね」


「あーアレは工房のような施設を作る時とか繰り返しで間違えてはいけない作業をするときとかでね。いやでも、工房設営ってハーン何勉強しているの……?」


「いや、工場的なノリでやれるからめっちゃノリノリでやれるわーというかエーテルで色々出来るって何デバッグモードで遊んで良いのかい!?って感じで今大学で一番楽しいなって思う講義なんですけども。私だけの工場……!あーっいやーマジでエーテルって神ですよ!」


 たまにハーンがテンションおかしくなることがあるが、魔術に関してテンションおかしくなるのははじめてだ。


「まぁ、ハーンにとっては新鮮に映っても私ら魔術師の大半は詠唱とかが必要な場面って大体雛形があって今更それをオーバーホールして改めるってことは、魔術の古いほど良いというのに反するから微妙なんだよね。今あるものでいいからそこまでガッツリ考える必要性があるのかって話。多少改変することはあるかもだけど」


「ふーん。そこは私と相容れないですね」


 皆も食べ尽くしたところでパーシヴァルからの伝令の魔術が届く。


『皆さん、図書館でトラブルが起きています。救援求めます』

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