想起の図書館
秀才な三人/想起の図書館その1
「あっマーガレットじゃーん!いぇい!」
「ガレスじゃん!いぇい!」
大学で講義を受けて終わった日、ホームズさんが知らない人に話しかけられている。その子はホームズさんのもとに駆け寄り、ホームズさんも駆け寄る。
見知らぬ人は苦手だけども、中でも苦手なのは知っている人の友達や知人の類なものです。私としてもそこは嫌な顔をせず、それにホームズさんの知り合いなら仲良くできるだろうという浮ついた考えを抱いて、彼女のように振る舞う。
そのガレスと呼ばれた女性は、ホームズのような明るさを持っており、双子とまでは言われなくても、おそらくはホームズと深い縁があるというのは分かる方です。その場合、関係はどっちが主なのか従であるのかが気になるところ。お互いに影響しあってってことも考えられますけども。
「あっ、君がハーンかぁ。よろしくね」
見知らぬ人は苦手である。だけども、ホームズさんの友達でここでなら変えられるのではないかという期待だから―――
「よろしくおねがいします。いぇい……?」
アカン……なんかやってるのめっちゃ恥ずかしくなってきた。慣れないことをするものじゃない。
「ハーンめっちゃノリ良いじゃん。いぇい!」
「アーサーも来たぞ!いぇい!」
ひょっこりと現れるアーサー。アーサーも随分とノリ軽いなぁ……
「かしましいを通り越してなんだそれは……人の邪魔になるから話すなら端っこに寄れ。」
モルドレッドがやってきて通路の邪魔にならないように誘導する。そうしているとガレスの友達らしい人が二人やってくる。
「ガレスくん。君に忘れ物があるよ!」
最初の印象は着飾ってるなって感じである。声は生まれ持った物というよりは鍛錬して響かせるように、立ち振舞の一つ一つも無意識というよりは意識的、天然か養殖かといえば間違いなく養殖。格好もフォーマルな感じを装ってるけども、あれは着ているよりも着られているだ。
もう一人は目を合わせようとしない。ゴシック系の格好をしている。
「これは課題というやつですか……」
紙みたいのを渡される。ガレスの感情の起伏が激しい。
「いつも出しているけども、アンタが話を聞かずに駆け寄ったから私そびれたんだよ」
一人の老婆がやってくる。怪しい格好というわけではないけども、それでも魔術師だって感じのローブを羽織っている。一人だけファンタジー世界から来たのかなって感じ。私も最初、魔術師ってみんなローブ羽織って杖を持っているイメージをしていましたが。
「申し訳ないです。ヘレナ先生」
そのヘレナ先生は私の方を見る。
「日本人……最近入ってきた生徒か」
「ハーンってみんなは呼んでいます。よろしくおねがいします」
ハーンって言葉に一瞬ムムっと顔をしたが、すぐさまに取り戻す。
「というか、私達のこと知らないよね。うん、自己紹介しましょう。私から行きますね。私はガレス、マーガレットの昔からの友達で円卓の騎士の一人でもあるよ」
「あっ、最近、アーサーたちに便乗してホームズって名乗ってるから!」
何やってんのって顔をホームズに向ける。
「で、そこのギザな感じでいつもチャラチャラしているのはトリスタン」
「トリスタン。君の運命を変える人さ……」
「まぁ、対話きっついなぁって思ったら私が翻訳するから」
言葉が通じているのに翻訳が必要なのはこれいかに……多分、この人叩き上げの人だろうって思う。
「で、そこのハイパー天才美少女魔術師がパーシヴァルです!」
胸が豊満だ。イギリス人の皆が身長高いからモデル体型で、くっってなることが多いけども、パーシヴァルさんに関しては一段と抜けている感じがする。目を合わせず逸らすからあんまりだけども、瞳は輝いており宝石のように感じさせる。
「天才だなんて……恐れ多いです」
「パーシヴァルは実際天才と呼ばれる逸材よ。ガレス、私は自分で名乗るよ。私はこの魔術大学のグランド・マスターの一人、ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーのを持つ者だよ」
「グランド・マスターって言うのはね!面倒くさいからグラマスって略すこともあるけども、このロンドン魔術大学で一分野において激ヤバな実績を納めた人に送られる名前なんだよ!というかハーンたちのマーリンもそうなんだけどね!」
このロンドンには何かしらの偉人の”名前”に意味を持たせることが多く感じさせる。ずっと常々考えていたけども―――
「その、エーテルって古い物に集積しやすいから名前も古くから伝わる偉人などと言ったものにしているでしょうか?」
「ハーンといったね?それでおおよそ間違いではないではないねぇ。まぁ、だからといってお前やマーガレットみたいに勝手に騙っても意味がないだけども」
「円卓の騎士の面々もエーテルを集める感じで襲名していますね!実感あったりしたりしなかったり」
円卓の騎士を名乗っといてそれを曖昧な効力ってそれ意味あるのかな……?
「というか、そもそもここにいる人達マジの天才、化け物の巣窟で私恐れ多いです……」
グランド・マスターとその教え子がいるからか……
「ホームズは違うの?」
「いやー私は……アーサーと一緒にいたらなんか円卓の騎士のお仕事を割り振ったくれただけのしがない魔術師なので……」
マーリンの教え子ってアーサーとモルドレッドだけなのか……
「そもそもグランド・マスターとそもそも繋がる事自体難しいからな……」
「基本そうだと思うよ。そこのところどうなんでしょうかヘレナ先生?」
「試験の結果から見てが基本だねぇ。後はその人の感性だったり、分野で決まるだろうさ。ちなみに言っておくとガレス、パーシヴァル、トリスタンの三人はマーリンのところだったのを私から貰った感じだったりするのさ」
名前を上げられた三人に動揺が走る。
「へぇー君たちって僕たちよりも才能あったりするのかい?」
火種を持ってきたなって思ったら、ヘレナ先生がしたり顔で見ているから完全に狙ってるなぁ……
「いや俺は単純にマーリンに目つけられただけだし、なんでいるのかよく分からん。アーサーはどうなのさ?」
「僕はニュートン学長に推薦貰ってきたから……多分そこじゃない?ニュートン学長もそこでOKしてマーリンの元に来ているって話の流れっぽいし」
周りが動揺し始める。
「正気か?」
「学長から名指しで推薦貰っているところ見たことないね。……理由は聞かないほうがいいね」
アーサーって何者なのか全然分からないけども、周りの反応が明らかにおかしいことからなにかヤバい地雷に踏みにじっているのだけが分かる。
「学長の名前が出るのってそんなにヤバいですか?」
「ヤバい、絶対厄ネタ。いや、俺がアーサーのいる目の前で言うのもアレだが、なんかある。学長ってマジで今の魔術師の全分野で口出し出来る知識、実力を持っているのにまったく自身の発展魔術だったり、研究分野が見えてこないトップにして異端なんだよ」
そんなさらっとアーサーの口から出るのなんか温度感ズレていない?過剰に恐れているだけなのでは……
「正直、納得いかないね。アーサーが学長に目を付けられている事実含めてだ。僕としては君たち4人に模擬戦をしたいのだけども」
トリスタンが口を開く。さっきのヘレナ先生の火種で完全に火が付いている。というか私もカウントされるの……
「私もホームズが成長しているか見てみたいし、お手合わせしたいね!」
「その3対4で良いのですか……?」
トリスタンが高笑いする。
「ああ、それは大丈夫さ。流石は侍の国出身といったところだ。正々堂々とするのを心がけていて素晴らしいよ」
ホームズがトリスタンの面と向かって宣誓する。
「ハーンはマジ天才だから舐めているとやけどするよ?」
「魔術というのは一日にしてならないものだ。そこの彼女はまだ始めたての者だろう?電脳やらも使って良いさ。魔術師の誇りが僕にはあるのでね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます