作戦会議/舞台防衛戦その2
「あーオリエンテーション兼ねてこのまま話しても良かったのだけどもね。まだ、時間はある。だけども、話が振られたのであれば仕事の話と行こう」
ホワイトボードを混沌とした部屋の中から取り出す。そこには地図と何人かの顔写真がある。
「まぁ、今回の仕事は今夜行われる記念公演が行われる舞台の警備だ。昨日、脅迫状が届いた。だけども、公演はキャンセル出来ないということで我々の出番というわけだ。二人一組で3グループに分けておく。正直なところ、万が一の時にという意図が強い」
パートナーはさっきの会話の流れで決まっている。僕はモルドレッドとだ。悪くはない。脅迫状の紙もホワイトボードに留められる。それをじっくり見るハーン。
「今回の脅迫状書いた相手は日本に関係した人かもしれませんね」
「それは、どういうことかな?」
全員で紙を囲んでじっくり見る。
「この文字、日本の企業で使われているフォントです。印刷に使われる魔術はありますけども、エーテルの痕跡は少ないですし、印刷などで使われる装置無しで正確無比に書くっていうのも難しいと思います」
「流石だね。見込んだだけある」
マーリンの需要があるだろうからねという発言が早速拾われる。
「それっていわゆる電脳技術ならば簡単にやれるだろうってことなのか」
モルドレッドが質問する。
「まぁ、パソコンが手段はあります。魔術での本は確かに出せるのですけども、それが可能な魔術師でないと難しいでしょうし。装置込みで考えれば別に難しいことではないですけども、正直言うとやりやすさというだけならばパソコンの方が”誰でも”は出来ますね」
電脳技術については今いくつかハーンから教材と指導ををもらっている。実際のところ、電脳技術について学ぶことと電脳製品を使うは違うことが分かる。電脳製品は使われるために存在している。
「なるほどな。じゃあそういうことだろうな」
ハーンがかばんから何かを取り出す。小さなボールのようなものを取り出す。
「相手が電脳技術を使うならば私の領分です。これは一時的に使えなくするものです。困ったら使ってみてください。電脳技術はエーテルに干渉しないのでやりづらいかと思うので、これが助けになれば」
ボタンがある。それを押せば使えるということだろう。どうやって作っているのか気になる……解体して分析したい。
「あーこの前部屋で作っていたよね!何作っているだろうって思っていたらこれだったんだ」
電脳を一時的に止めるって……
「これあれか、神経に干渉するようにパルス大きく乱す物か。ハーンのはこれに干渉されないように身体パーツを防護されている。違うか?」
「正解。外部から直接妨害するってめっちゃ難しいだけども、一時的にならのと、出回る製品を考えれば出来るかなって作ってみました。めっちゃ機密な電脳技術を使えば使うほど入力、出力は繊細になりますし、そうなるとノイズはじゃまになるから防護する技術も必要ってわけです。なので高度な電脳技術の持ち主は少なくとも外部から干渉は備えるってものです」
専門分野になると早口になるのホームズと似ているな……
「ただ、留めることを優先しているので時間は期待しないでください。すぐに拘束するなりしてください。あとはマジの強敵はこれ効かないので、万が一の時来たら救援なりも検討したほうが良い位には電脳技術の持ち主です」
「万が一の時か……来ないと良いだけどもな」
「ビビってるなモルドレッド。こういう時は力でぶん殴れば良いんだよ」
「モルドレッドに必要なのは筋肉かもな」
モルドレッド、ビビってる気持ちは分かるけども、踏み出してほしい。その気持が僕なりにもある。分かるし理解できる。君が剣を使わずに戦っているのは僕に対しての劣等感ゆえだろう。
「はぁ?お前だけには言われたくないわ!」
「モルドレッドは内弁慶ですね」
ガヴェインのツッコミが入る。
「内弁慶って。うぅ……俺は技工派なんだよ。高密度のエーテルでゴリ押しで切り裂くアーサーの剣と違ってな」
実際、モルドレッドと戦う時に気をつけるのは手数ではある。正直、技工派だと思えんがな。
「話逸れそうだから、マーリンが横入りするぞ。で、この写真は要人たちね。舞台の役者とか重要なスタッフだ」
色々と顔がずらりと並んでいるが、そういうのには疎いし、名前や顔も覚えていない何もコメントできなかった。
「あっ!カトリーヌさんだ」
ホームズが指を指した写真を見ると。
「前に映画で見たかな。気に入ったのを覚えている」
「そうそう、私の推しの女優さんです!」
今日のホームズはより一層輝いている。ああやって、好きなものに目を光らせるのはホームズの良いところで見習いたい。
「カトリーヌさんって、フランス人の方なのですが年々魅力を増す女優さんなのです。歳を取るって嫌だなぁって思っていたんですけども、カトリーヌさんみたいに素敵に歳を重ねられれば良いなって思っています」
「いや、ホームズ?君何歳よ。老いはまだ怖くない歳だろ」
「ランスロットさん!19歳ですよ。もう自意識がしっかり目覚めて長らく共にしていたティーンエイジが終わるのは世紀末と言っても過言ではないですよ!?」
「世紀末ね……せいぜい移り変わりぐらいです。人生大胆に変わることというのは起こりそうで起きないものですよ」
ランスロットさんとガヴェインさんの歳はいくつかは知らないが、貫禄を感じる。
「マーリンとしてはさっさと現場に下見行ったほうが良いじゃないかって提案するよ」
「ん。まぁ、そうだな。行くぞ。どこを取り持つとか、何が出来るのか知りたい。いいか?」
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