第9話 ミカ視点

 水の音で恐怖心が増して、ああ、あたしこのまま死ぬのかな? なんて思いを巡らせていた。どうせ死ぬのなら、シゲノリに好きだって告白しておけばよかった。ことわられるだろうけれど。


 体の自由が効かなくて、意識も朦朧としてきたところへ、シゲノリの顔が見えた。嘘。そんなわけない。だって、シゲノリは今ごろ、あの子とあたしのことを笑っているのでしょう?


 あたしたち、そういうスタンスでやってきたでしょう?


 だから、こんなところにシゲノリがいるわけがない。


 なのに、シゲノリはあたしをお姫様抱っこして、岸にあげてくれた。手足が自由になって、緊張が解けて、意識をなくした。


 ◇ ◇ ◇


 目が覚めた時、両親があたしにすがりついて泣いていた。


 もう芸人なんて辞めてくれ!! お父さんからはそうせがまれた。芸人でいる以上、似たような目にあわされてしまうから。もう、シゲノリとは縁を切れと、懇願された。


 お母さんはただ泣いて、あたしを抱きしめた。


 シゲノリのせいになったの?


 ちがうよ? これは、ぼんやりと生きてきたあたしのせいだよ?


 それなのに、どうしていつもすれちがっちゃうかなぁ?


 全力で否定したいのに、体がだるくてどうしてもねむいんだ。お願い、少しだけやすませて。


 つづく

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