第7話 ミカ視点
バイトが終わって、クタクタになっていたから、油断していたのかもしれない。
路地裏を歩いていたら、強い力で引っ張られた。ここ数日、まともに食べてなかったからフラフラして転んだ。そんなあたしに黄色いペンキがぶちまけられる。視界が黄色く染まった。
「あーあ、そんなになっちゃって」
この声は、資産家の娘? 見上げれば、まさにその子なわけで。取り巻きも、シゲノリの熱狂的なファンばかりだ。
「今日のコントが最低だったのは、あなたのせいよっ!!」
せっかくかわいい女の子なのに、顔面がひきつっている。お願い、そんな顔をしないで。あたしは、みんなを笑わせるためにお笑い芸人になったの。シゲノリを追いかけたっていうのも一理あるけど。
だから、そんな顔をしないで。笑って?
「なにが選ぶ権利があるよっ。あんたみたいなブス、シゲノリが選ぶわけないじゃんっ!!」
「そうよっ!! あなたこそ選ばれる価値もないわよっ」
今度は赤いペンキが頭からかぶせられる。
「学生時代からの知り合いだっていうだけで、シゲノリの彼女気取りで鬱陶しいんだよっ!!」
頰を叩かれた。
「やだぁー、ペンキが服に飛んだー!! クリーニング代出しなさいよっ!!」
お金なんて、あるわけがない。
「払えないのなら、あなた自身で払ったらどう?」
資産家の娘の顔がますます歪む。だめ、そんな顔しないで。
暗がりからガタイのいい男があらわれた。フランケンシュタインを連想させるその男には見覚えがある。彼は、あたしを軽々と担ぎ上げた。
「じゃ、後始末よろしくぅー!!」
資産家の娘は、札束を彼に手渡した。
え? 始末ってなに? あたし、殺されちゃうの?
「安心しな。ちょっと泳いでもらうだけさ」
そう言うと、あたしはバンの中に放り込まれた。バンの中には三人の男がいて、すばやくあたしの手足を縛った。
「すぐシゲノリを呼んでやるから、少しだけがまんしてくれ」
フランケンシュタインを連想させるその男は、シゲノリの芸人仲間だ。でも、どうしてこんなことをするの?
つづく
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