第5話 ミカ視点

「この前もあたしのこと見てたでしょ?」

「だれがお前なんかを。はっ。ホレるなよっ!?」

「ホレないわっ!」

「なんならホレてもいいんだぜ?」

「あたしにだって選ぶ権利があるわっ」


 舞台上で三秒間の沈黙。ヤバ。シゲノリ怒ったかな? ふだんの会話も、打ち合わせもほとんどしないあたしたちだから、実際舞台に立ってみないと、お互いがどんなリアクションをするのかがつかめない。


 今のはあたしが言いすぎた。


「「ごめん!!」」


 意外にもハモッてまたおどろく。


「言いすぎたよね、ごめん」

「いや、おれも少しぼんやりしてたわ」


 そこでそこそこの笑いが起こったから、まぁそれはそれで演出ということにしておこう。


 だけど、なにか腑に落ちない。シゲノリは、あの程度で傷つくような性格だったっけ?


 学生時代の方が、よくしゃべっていたから、今のシゲノリをアップデートできなくてこまる。ねぇ、今のあなたはなにを考えているの? 芸人辞めたら、なにになるの? その時あたしは、放り出されちゃうの?


 わからない。わからないまま、二人で頭をさげた。


「どうも、ありがとうございましたー!!」


 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る