第3話 ミカ視点

 シゲノリがあと一年で売れなかったら芸人を辞めようと考えていると知ったのは、ほかの芸人仲間の口から聞いた。どうしてあたしになんの相談もしてくれないのだろう?


 悩んだけれど、シゲノリがそう決めたのなら仕方のないことなのかもしれない。


 シゲノリには、結成当初から熱狂的なパトロンがいる。資産家の娘で、結成当時からのシゲノリのファンで、あたしとはちがって、かわいらしいタイプの女の子。


 飲みに誘われたり、ご飯に誘われたりしてる。あたしは一度も誘われたことがないけれど。


 もしかしたら、彼女のお婿さんになって生きようと考えているのかもしれない。


 そうして今日も、少しも熱の入らないコントを繰り返す。


「それおれがかっこいいじゃん!?」

「ホレるかよっ!!」

「言ったなぁ。ホレルナよ!?」

「ホレないよっ!!」


 とある大御所芸人さんと会った時、きみら夫婦になったらおもろいんちゃう? と言われたことがある。その時、速攻でシゲノリが否定していて、あたしはその後、トイレで吐いた。


 そんなに嫌わなくてもいいじゃん。少なくとも相方だよ?


 なんか、もうむなしくなってきちゃった。


 つづく

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