第21話  缶詰め

「人間の缶詰があったら良いのになって思いません?」

「思わねーよ!?」

「僕はトウコさんに言ったんですが……」

 飲み屋のカウンター席で、俺とヤツの間に座っていたトウコがそうだそうだと頷いた。

 今日のトウコは二十歳を越えている痩せた黒髪の女の姿になっていて、ひとりで飲んでいたらしいのだが、俺たちがたまたま同じ店に入り、よせばいいのにヤツがトウコに声をかけて三人で並んで座ることになったのだが、なんだこの並び。そしてなんだこの話題。

「私は新鮮なうちに食いたいがのう」

「そりゃ生が1番おいしいけど、手軽に食べられて保存が聞くって素晴らしい技術ですよね。誰かヒトで作ってくれないかな~」

「お前らはなんでそういう話を俺の前でするの? どういう感情?」

「おぬしらじゃって鶏小屋の前で平気でフライドチキンの話したりするじゃろうが。それと一緒じゃ。」

「今回は缶詰の話ですけどね……しかし人間のつくる缶詰もなかなか侮れないもので、だいぶ美味しくなってますから、ぜひかわいい女の子の缶詰を商品化してほしいところ」

「なあその話まだ続くの? 帰って良い?」

「しかし人間まるまる1人缶詰にするのは難しかろうな。単純に量が多いし一部分だけになると思うぞ。おぬしそれで足りるのか?」

「あー……まあオヤツだと思えば……」

「部位はどこが良い?」

「そうですねぇ……やっぱりタンなんかつまみにもなるし一口で食べられるし良さそうじゃないですか? トウコさんは?」

「睾丸のオイル漬けとかかの?」

「乙ですね~~!」


 ……まだまだ盛り上がりそうな二人を置いて、俺はこっそりその場を抜け出した。バケモノどもの会話には慣れたつもりではあるがこの先まで進んで聴きたいとは思わない。

 結局、今わんさかいる人類をわざわざ缶詰にして保存食にしなくてもいいか、という結論に達した、という特に知りたくもなかった結論を後日ヤツから聞かされた。



 

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