第17話 流星群

「ナツメぇ、今夜は十年に一度の綺麗な流星群が見られるんやて。一緒に見よか」

 テレビを見ていた先生が、こちらを向いて楽しそうに言った。

「流星群なんて、そう珍しいものでもないでしょう。」

 普通の人間ならば、まあ確かにちょっと珍しいのかもしれないが、この人なら流星群など飽きるほど見てきてるだろうに。

「つまんないこと言わんの。綺麗なもんは何回見てもええもんやで」

 そう言いながらニコニコしている先生の顔は嫌いではない。

 嫌いではないのだけど今夜の天気予報は……


 夜。空はあいにくの曇り空で、星のかわりに雨が降った。

「あーあ、降ってもうた……最悪やー楽しみにしてたのに」

「10年もすればまた綺麗な流星群が見られますよ。」

「ええー10年も待てん~」

「千二百年生きてて何言ってんですか貴女は……」

「長生きやからこそ、一瞬一瞬の楽しみが大事なんよ。ナツメにはまだわからんか~お子さまやからな~」

 どちらかというと目の前のことにいちいち一喜一憂する先生のほうがよほど子どもっぽいと思うのだが。……でも、実際に僕と先生との間には千年もの差があり、その差が埋まることは永遠に無い。

 僕が先生のように、一周回って目の前の物事ひとつひとつを楽しめるようになる頃には、先生はまだ僕のそばにいるのだろうか。

「まあお天気ならしゃあないな~また10年後に一緒に見よか」

「えっ……一緒にですか?」

「当然やろ。」

 あまりにもあっさりとした先生の言葉に、僕の頬は緩んでしまわなかっただろうか。

 千年先はともかく、少なくとも十年先は、僕がそばにいることは先生にとって当たり前のことらしい。

 それが、とても嬉しかった。

 




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