第11話 からりと
「はーっいい天気!!」
からりと晴れた秋空が気持ちいい。しかも今日は学校が休みだ。
アタシは縁側でひなたぼっこをしてから外に遊びに行くことに決めた。
外ではお手伝いの綾子さんが洗濯物を干している。うんうん、今日はよく乾きそうだもんね。
白いシーツや布団や服やらが干されていく。次に綾子さんは洗濯物の山の中から黒い紐を取り上げた。
うちに黒い紐なんてあったかなぁ。
そう思いながら眺めていたら、綾子さんの手によって紐は広がって、マイクロビキニの形になって物干し竿にかけられた。なぁんだマイクロビキニかぁ。
「ちょちょちょちょちょちょっとごめんなさい綾子さん!!」
待て待て待て待てなんでうちの洗濯物に黒のマイクロビキニがあるの!?
思わず縁側からサンダルをひっかけて物干し竿に駆けつけると、黒いものは確かにマイクロビキニだった。見間違いであってほしかったなー!
「雛菊様の退魔師服だそうです」
「なんで!? 前は巫女服っぽいの着てたじゃん!アタシはいつもジャージだけど!」
「なんでもこれが一番破魔の力が高まる装備なんだとか……」
「ホントに!?騙されてない!?」
「正直そう思うんですけど私から申し上げても仕方ないではないですか……」
「それはそうだけど……」
「紫苑、何してるの」
縁側のほうから声がして振り向くと雛菊が立っていた。
「休日だからってダラダラした格好はやめてよ。有栖川の人間として、」
「ねえ今服装に関する説教全然説得力ないよ!?何よこのマイクロビキニ!?」
「マ……? それは破魔の力を極限まで高める新装備よ」
「絶対騙されてるって!!嫌なことは嫌って言っていいんだよ!?」
「騙されてる?そんなはずはないわ。だってお師匠様もつけてるもの」
その間に洗濯物の中からもうひとつの黒い紐のかたまりを綾子さんが引っ張り出した。
それを広げるとひとまわり大きなマイクロビキニが翻った。
「もうあのおっさんの言う事聞くのはやめな!!」
「何言ってるの。どうしてもというなら紫苑のぶんも頼んでもいいわよ。いつもジャージじゃない」
「頼むかーー!!ねえこれ着てくのやめてよ危ないよ!」
「怪異退治に危険はつきものだわ」
「そういうことじゃなくてぇ」
「何もこの服だけで町を回るんじゃないわ。コートを羽織って、戦いのときだけこの格好になるのよ」
「やめてよ逆に変態度合いがあがるよ……」
「この装備だと妖魔たちが恐れをなして蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うとお師匠様もおっしゃっていたわ」
「そりゃ逃げたくもなるわ!!」
からりと晴れた青空の下、風に揺れる妹と、その師匠のマイクロビキニ。悪い夢でも見てるんじゃないかと思った。
※※※
「テッちゃん、アタシあの家出ていきたいかも……」
翌日、学校帰りに公園のベンチに腰かけてハンバーガーを食べながらアタシはテッちゃんに呟いた。
テッちゃん……テツオ叔父さんは氷をがりがり齧りながら言う。
「勢いで家出すんのはやめといた方がいいぞー。俺みてぇになっから」
「もう最悪そうなってもいいから勢いで出ていきたいよ~……」
「何があったんだ……」
「恥ずかしくて言えない」
「恥ずかしくて言えない!?」
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