秋分 その菓子はリリック

 問いかけてハッとした。今朝、何を食べただろう。


 確か、カスタードクリームパイ。昨晩はミルフィーユだ。そして今晩はバウムクーヘンの気分で……あれ? 俺はいつの間に甘いものばかり食べるように……こんななことってあるだろうか。


「今や多くの人がスイーツに傾倒し、ご飯を食べません。な光景は今やメディア〈サイフォン〉を埋め尽くす勢いです」

「確かに皆、甘いものに夢中だな」

 ザッハがやれやれと肩をすくめた。


 そう、ただ夢中になっているだけだ。そういう時だってあるさ。なんだってスコーンはこんなにもオロオロしているんだ?


「大体『パンデミミック』に練り込まれたマリー・トツォの甘い旋律バイラスは、AIが機械学習の末に始めた創作活動の産物だろ? メディアだって創られた世界。誰もが自己表現できるプラットフォームで、余暇を楽しんでいるだけじゃないか」


「ですが、最新鋭の超小型計算機スーパーコンピュータ月と太陽ルナソル〉が、創作世界と現実世界が限りなく近似し、重なり合う可能性をはじき出したのです。この状況は、わ、我々人間が……」

 



   §




 ワシの好物はガトーショコラじゃ!


 甘いものが得意なわけではないけれど、ビターな珈琲と合わせてなら……執筆の手が止まること間違いなし。


 貴方にもそういった執筆のお供があるじゃろう。


 『おかしな話』はそんなことを言いたいがための前フリでもある。

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