穀雨 パイロキネシス

 ワシの琥珀色の瓶詰帆船ベルンシュタイン号の丸窓の外は、穀物に実りをもたらす雨じゃ。そろそろ次の岸へ移る支度をせんとな。

 


 【Bernsteinベルンシュタイン】とは発火能力パイロキネシスを秘めた地質時代の植物樹脂の化石、つまり琥珀アンバーのことで、〈燃ゆる石〉とも呼ばれておる。地に埋もれ、海に洗われ、長い長い時を経て、やがて表舞台に回帰する琥珀は、時空を超える〈放浪者ウォーカー〉と言ってよいじゃろう。



 そしてもまた、時空を超えて



 ワシはBernsteinベルンシュタインの名に、いつか心に炎を灯す力パイロキネシスが宿る物語を、というささやかな祈りを込めたのじゃ。

 





 ぶおぉ〜〜ん、ブオォォ〰ン…… (法螺貝の音)


 うむ。もうすぐ出航じゃ。

 ではまた。


 



【春の寄稿】


身体は常に過去と未来の境界にある。

記憶は過去へ、空想は未来へ、『現在』から旅をする。

心は自由に、時空を超えてゆく。


――『物語は時を渡る舟』

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