第14話


廊下と廊下が三つつながる場所で、できたわずかなスペースに、胸ぐらいの高さの台座がある。天井が抜けて空が見えるそこには、柱が六つもあって、隠れるのにちょうど良さそうだ。


「……」


「……」


話し声。


誰かいる。


なんとなく、そーっと近付いて、声のする方をのぞきこむ。


見覚えのある、耳と尻尾。


ヒューレアさんは服装変わらず、すぐにわかってホッとしたら、


「──ら、さっさと下に戻りなさいよ。邪魔よ」


一緒にいる女性に、なんだかきつくあたられている……なんだろう。イジメか?


思わず隠れたが、話し声は終わった。女性はすたすたと歩いて行ってしまい、ヒューレアさんは意気消沈して柱に寄り掛かる。


声をかけづらい……。


しばらく経って。今度は違う廊下を誰かが進んできて、複数の足音が止まる。


うーむ。


別に、悪いことはしてないんだけど、いまさら出られん。


どうみても、一対複数。騎士っぽい若者四人に、一人が睨まれて……って。


俺は思わず、飛び出すところだった。


囲まれてるのが、山河だったのだ。


睨まれているのに、やつはいつも通り、平然と落ち着いている。


すこぶる空気悪い。


「──もう、いいか?」


「っ、待て……っ」


体の向きを変える山河を、一人が呼び止める。


山河は、仕方なさそうにそいつを見たが、呼び止めた相手の方が、余裕がなさそうだ。


「殿下の……、お供なら、お前でなくともつとまるだろう……!」


えっ、俺の話?


一瞬の間の後、山河が答える。


「じゃあ、替わるか?」


「……っ」


囲んでる側の方が、動揺している。


山河は彼らを一瞥。もう用はないとばかりに背中を向け、廊下を進んでいく。俺が案内された部屋の方角へと。


負けた空気をしょって騎士たちは来た通路を戻っていき、彼らがいなくなってから、ひょこりとヒューレアさんが出てきた。


「殿下」


「!」


隠れてたの、バレてる。


「部屋に戻りましょう」


なんとなく、気まずいまま部屋に戻ったけど。

黒猫しかいなかった。



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