第83話 ソフトナでも進化

 ハードナを僕が倒した二日後にソフトナが現れた。僕はボトル兄上とミレーお姉様を連れて現地に飛んだ。


 ソフトナはハードナより体が大きい。ハードナは全長十五メートル、体高八メートルだが、ソフトナは全長三十メートル、体高十八メートルあるんだ。

 そして、皮は硬く、体は脂肪だから剣で仕留めるのは至難の業の筈なんだけど……


 うん、僕は目の前に極めれば成せない事は無いという実例を見たよ。ボトル兄上が両足を斬り飛ばしたと思ったら、ミレーお姉様が首を斬り落としたよ。相対して僅か十秒程の出来事でした。


「何だ、あんまり手応えが無かったな」


「そうだね、ボトル。コレは厄災認定を外しても良いかもね」


 イヤイヤイヤイヤ、アイヤ待たれイ!! お二人が強過ぎるだけで、普通の国や軍隊だとこんな瞬殺は無理ですからね。僕はミレーお姉様にそう抗議したんだよ。


「えーっ、そうかなー? でもコルクだって瞬殺出来るのに、そんな人を化物みたいに言うなんて。お姉さんは哀しいなぁ」


「ミレーお姉様、僕は魔術を使用してです。兄上やお姉様の様に、体術や剣技では瞬殺する自信は欠片も有りませんから」


「何だって、いつからコルクはそんなに軟弱になったんだ。コレは帰ったら鍛え直す必要があるな」


「兄上、そんな暇は有りませんよ。僕は仕事が詰まってますから」


「良いか、コルク。時間はな、有るんだ。無ければ作るんだよ」


「真面目な顔して言ってもダメですよ、兄上。騙されませんからね」


「ミレー、コルクが悪い子になったよ……」


「まあまあ、ボトル。また機会があればって事にしましょうよ。ソレよりも早く持って帰ってウルフ達に食べて貰いましょう」


「そうでした。コレを食べたらどんな風に進化するのか楽しみです」


 そして、僕達はソフトナを持ってカインズ公爵家の庭に戻ったんだ。兄上の指示で僕は兄上が斬り飛ばした片足をカットしてフェーン・リルウルフに進化したウルフ達に差し出した。

 皆が尻尾を振り振り、嬉しそうに食べている。そして、片足が骨を残して無くなった時だった。


 ウルフ達の全身がブルブル震えて止まらない。僕はコレはオカシイと思ってイジイさんを連れて来たんだ。

 けれど、イジイさんはその状態を見て心配無いと言う。そして、ブルブル震え出してから三分後、光に包まれたウルフ達。そして、光が収まった後には、体長三・五メートル、体高二メートルの仔犬達がワラワラとソコに居た。漆黒と白銀の毛並みはそのままに、仔犬特有の円な瞳と、片耳だけが折れた状態で。そして、イジイさんを見て


『あるじー、進化出来たよー』


 と、短くなった尻尾を振り振り喋りだす。


 エッ? 進化だよね。見た目は退化に見えるんだけど……


「カッカッカッ、コル坊よ。見た目に騙されてはイカンぞい。魔力を見てみるのじゃ」


 言われて僕は魔力を見て納得した。うん、化物だね。コレは僕でも神級魔術まででは相手にならないや。超級魔術でナントカかな。カインズ公爵家は誰にも攻められない防御を手に入れたようだ。そして、僕は兄上に言って、もう片足を貰って自分の領地に戻った。


 勿論、皆が進化したよ。コレは神化と言っても良いかもね。

 そして、進化した皆が僕の事もイジイさんと同じように『あるじー』って言ってくれるから、僕は全身を使ってモフモフさせて貰いました。

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