第82話 ハードナで進化

 僕がハードナを持ち帰るとすぐさま解体職人達がワラワラと集まってきた。


「コ、コルク様! どうでしたか?」


 職人頭しょくにんがしらのモードさんがそう聞いてきたから、僕は付いて来る様に身振りで合図して、ウチの会社の解体倉庫に向かったんだ。


 そして解体倉庫でカッチカッチやぞ状態のハードナを取出して、すぐさま解凍してお渡ししました。


「うおーっ! こんな完璧な状態だなんて!」


「こ、これは…… 国家予算を上回る利益がコルク様のモノに!」


 職人達が口々に言うけれど、この人達、喋りながら既に解体に入ってます。職人プロですねぇ。

 僕はモードさんに言った。


「お肉は確り重量を計って報告をお願いしますね。ソレと皮はなめして革にするから、五メートル四方でカットをお願いします。骨は武防具部門に回して下さい。爪、牙も一緒です」


「はい、コルク様。委細、お任せ下さい」


 僕はモードさんの返事を聞いてから解体倉庫を後にした。職人達がちょろまかしたりしないかって? 

そんな事をする人は一人も居ませんよ。職人と書いて【プロ】と言われる人達なんですから。


 そして、全ての解体が終わりモードさんが報告書を提出してくれたので、職人達に臨時給金と共に美味しい部分のお肉を一キロずつ手渡した。


「コルク様、本当に良いんですか!!」

「もう、俺達はコルク様に一生付いて行きますぜ!」

「アキンド国良爵様に永遠の忠誠を!!」


 職人達が口々に喜びを声に出して帰って行った。そして僕はイジイさんの元に各部位のお肉を三キロずつ持っていったんだ。ハードナのお肉を見たイジイさんが、


「コレはアレじゃな。サクラちゃんも呼んで協力して貰って、コル坊の婚約者達も集めて、地球の料理を使ってパーチ(ティ)ーじゃーーーーっ!!」


 イキナリ、テンションマックスにならないで下さい。ビックリしました。


「ソレからコル坊よ、ウルフ達にも端肉で良いから分けてやってくれんかの」


「勿論、そのつもりで一頭につき五キロのお肉を持って来ました」


「おお、ソレはソレは。コレで進化するじゃろう」


「えっ、進化するんですか?」


「何じゃコル坊でも知らん事があるんじゃな。魔獣がハードナの肉を食べると肉体が進化して、ソフトナの肉を食べると知性が進化するんじゃ。ソフトナの肉を食べたら喋りだすぞい」


「本当ですか! それじゃボトル兄上とミレーお姉様に言ってソフトナのお肉を分けて貰わないと。あっ、カインズ公爵家のウルフ達にも先にハードナのお肉を持って行こう!!」


 僕はワクワクして、ウチのウルフ達にお肉を上げた。そしたら、ガイアウルフは黒や茶系の毛並みが多いんだけど、漆黒と白銀の二種類になって、体が一回り大きくなるし、魔力がとても強くなった。


「進化したぞい。フェーン・リルウルフじゃ! 漆黒の個体は闇魔術に長け、白銀の個体は光魔術に長けておるんじゃ」


「それは凄い。僕は早速カインズ公爵家のウルフ達にもお肉を与えて来ます」


 そう言ってイジイさんに後をお願いして実家に戻った僕は、庭にいるガイアウルフ達を集めてハードナのお肉を与えた。進化するウルフ達。そして、一頭を連れてボトル兄上の元に行き、ソフトナのお肉を与えたら、言葉による意思疎通が出来る様になるんです。と伝えた。


「本当か、良し、分かった。ソフトナを狩ったらコルクの分もちゃんと分けるつもりでいたけど、ウルフ達の分もちゃんと分けるからな」


「はい、兄上。よろしくお願いします!」


 僕はホクホクしながら実家を後にしたんだ。後ほど、母上と祖母おばあ様に実家に帰ってきたなら顔ぐらい見せなさい! とお叱りの連絡が来たからとんぼ返りしたけどね。トホホ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る