第81話 厄災がネギを背負って……

 金清様の小さなお社を本殿にご神体として祀っているのだが、本殿にお祀りした事でお社から出ていた神気が境内でのみ感じられる様になった。


 それで勘違いした魔獣が一匹、奥から出てきたようなんだ。魔獣の名前は【ハードナ】っていう名前で、厄災認定されている。けれどもその体は宝庫らしくて、全てが利用可能らしい。これはチャンスだ。僕は【魔術大全の書Ⅱ】をパラパラと捲る。

 別に読んでる訳じゃないんだ。内容は全て暗記済みだからね。コレは僕のクセで考え事をしている時に本を捲ると名案が出てきたりするからなんだ。

 前に来た厄災は跡形もなく消し飛ばしてしまったから今回はキレイな形を保ったまま仕留めないとね。何せお肉が…… 超高級品らしくて、前回現れた時はS級の冒険者を沢山集めて仕留めたそうだけど、今回はウチの領地内だから僕が一人で対処するつもりなんだ。

 

 そして、対処方法も決まっている。今回は竜級魔術の出番だ。【絶対零度キグナスの氷○】(コレは自主規制です。)漢字魔術、Ⅱは完全に誰にも読めない読み方になってるよね。けれどもこの魔術なら完全体で仕留める事が可能だから、コレで行く事は決定してるんだ。今、僕が悩んでいるのは二人の人物についてなんだ。


 そう、ボトル兄上とミレーお姉様の二人だ。あの二人ときたら今回の厄災は、私達二人が仕留めると言って聞かないんだ。二年前に現れた厄災、破滅竜デストロイドラゴンを跡形もなく消し飛ばしてしまったコルクには荷が重いとか言って…… 消し飛ばしたのが事実だけに僕も反論し辛いんだけどね。けれどあの二人に任せてしまうと、貴重な皮もズタズタにしちゃうだろうし、肉も一部食べられなくなってしまうだろうから、絶対に僕が仕留める必要があるんだ。

 それに何やかやと言ってるけど二人とも厄災と戦いたいだけなんだろうし。そこで僕は心をお肉じゃなくて鬼にして強権を発動したんだ。兄上は確かに僕の兄ではあるけれども未だに無爵位だ。変わって僕は王国と皇国から認められた国良爵と言う大公権限の爵位を持っている。

 身内相手に使いたくは無かったけど、しょうがなく僕は上の立場からボトル兄上に命令を出したんだ。


「ボトル兄上、いや、ボトルよ。国良爵として命ずる。今回の厄災に手出しする事はまかりならん!」


 ってね。そしたら、そしたらだよ。ミレーお姉様が強権を発動しようとしたんだよ。


 いやー、それも読んで先手を打っておいて良かったよ。僕は直ぐにヨーガ国王にお越しいただきましたよ。というか、隣の部屋に隠れて貰ってたんだけど。サリー王妃様も一緒に来て貰ってたんだ。


「ミレーよ、国王として命ずる。其方そなたも今回の厄災に手出しはならん!」


「そんな、お兄様!」

「くっ、コルク、卑怯だぞ!」


 兄上、女性騎士の【くっコロ】は見たいけど、男性の【くっコル】は需要がありません。何て言ってる場合じゃない。このままだと絶対に二人から恨まれるから、僕は考えていた計画を二人に伝えた。


「ボトル兄上、ミレーお姉様。お忘れですか? 【ハードナの後にソフトナ有り】を。恐らく僕がハードナを仕留めたら、二日以内にソフトナが現れます。そちらは兄上とお姉様のお二人で対処をお願いします」


 そう、夫厄災であるハードナが倒されたのを察知したら、妻厄災のソフトナが現れるのだ。コチラも全身利用出来るのだが、肉は脂ばかりなので、少しぐらい斬っても大丈夫なんだ。

 そして、僕の計画は上手くいった。


「本当か! コルク! それならハードナは我慢しよう!」


「やっぱりコルクは良く出来た弟だね。ちゃんと私達の事も考えてくれてたんだ!」


 フッ勿論ですよ。お二人が気持ちよく手出ししないように、ちゃーんと考えてますよ。アッ、ブラックコルクが少しだけ顔を出してしまった。


 そして、僕はカッチカッチやぞ! にしたハードナを領内に無事に持ち帰ったんだ。

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