第80話 神社を建てよう

 翌日である。


 僕は集まった大工さん達を案内して金清様のお社までやって来た。秘書として付いて来てくれたのはマアヤとマキヤの二人だ。


「さて、神社を建てて欲しいのはこの土地になります。そして、あそこに見えるお社にご神体がありますが、あのお社はそのまま神社の中に取り込んで下さい。ご神体は人が見て良いモノではありません。こちらの神様は【良縁・子宝・安産】等にご利益がある夫婦神めおとしん様です。もし、ご神体を見てしまったら、見た方はこの先、一生を通して金清様を崇め奉って貰います。その覚悟がある方だけ、ご神体を見て下さい」


 僕の説明に棟梁が返事をする。


「コルク様、ワシらは無学な大工だ。けれど、神様のお社を建てるならやっぱりその神様に敬意を持ってのぞむのが礼儀だし、ご利益を聞けばコッチに居る若い衆わかいし達には最高の神様だ。勿論、ご神体を拝ませていただいてから仕事に取り掛からせて貰いますぜ」


 棟梁の返事を聞いてから皆の顔を見てみたら一様に頷いていたので、僕は金清様に声をかけた。


「と言うことらしいので、よろしいですか? 金清様」


「勿論じゃ。我も嬉しいぞ、お主らに我から祝福を授けよう」


 その言葉と共に皆が温かい光に包まれた。僕達も含めてね。

 棟梁が叫ぶ。


「ふっ、ふおおーっ!! 勃った! 十二年ぶりにムスコが勃ちおったっ!! これは帰ってからカカアを抱かねばっ!!」


 棟梁、成人前の子供が居るんだからもう少し言葉を選んで下さいね。

 マアヤもマキヤも顔を赤くしているし。他の皆も口々に授かった祝福を声に出して言うけれど、ここでは発表を控えたいと思います。


 そしてやる気に満ち溢れた大工達が、僕と金清様で相談して描いた設計図を手に、それぞれが手を動かして、神社を建て始めた。僕は神域を顕著にする為に囲いを魔術で作っておいた。


 鳥居から建て始め、石畳道を作り上げ、拝殿を建てて、本殿を建て上げた。全てが建てられたのは三週間後の事だった。そして、仕上げに僕は御神木を植える。拝殿前に大銀杏を、本殿前にくすのきを植えた。


 金清様はとても喜んでくれて、後はこの周りに人が住んでくれて賑やかになれば言う事は何もないと言ってくれた。

 僕は棟梁達にそのまま神域内に社務所兼住居を建てて貰った。そして、この神社の管理者を決める為に会社に戻った。


「ナーセナル、既婚者で子宝に恵まれておらず、善良な夫婦を探して欲しいんだけど」


 困った時のナーセナルで、僕はまた無理を承知で聞いてみた。すると、


「シャチョー、商工ギルドの後輩で結婚して十二年になりますが、子宝に恵まれず半ば諦めている夫婦がおります。人柄は保証いたします」


 直ぐにそんな返事が帰ってきたんだ。僕はまだ商工ギルドに籍があるその二人をマスターに頼んで引き抜いたんだ。そしてやって来た二人に、聞いてみた。


「新しく建てた神社で神職として務めて見ませんか? きっと良い事があると思うんです」


 ご主人はハワーズさん三十一才。奥さんはミレーヌさん二十六才だ。二人は僕が勧めるならと承諾してくれた。

 僕は二人を連れて金清様の神社に行き、ここでこの神社の掃除や神様への供物を準備したりして欲しいと頼んだ。そして、作法として二礼二拍手一礼を教えて、毎朝晩に欠かさずに本殿で行って下さいとも教えた。


 二人に内緒で金清様に聞いて見たら、どうやらハワーズさんの子種に問題があったようで、既に治したからと教えてくれた。これでこの二人も真摯に仕事をしてくれるだろうね。

 僕は人が移り住める様に道を整備して、区画を決めて家を建てて、住人を誘致してからだけど、お祭りをする事も計画していた。それをイジイさん、サクラちゃんに相談しようと考えている。


 夢が膨らむけれど、先ずは一つ一つを片付けて行こうと思います。













 



 


  

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