第72話 軍隊の進攻(侵略者側)

 俺は浅間あざま甲介こうすけ。フランス外人部隊オリュー・カットマー部隊長の指揮下にいる。最近になってオリュー隊長が武器、弾薬をちょろまかして貯め込んでいるのを知った。

 何故そんな事をしているのか聞いてみたら、知ったらお前もココに戻れなくなるが良いか?と言われた。俺は人を撃てるなら何処でも良いと返事をした。俺の返事に笑いながら、そうかと言ったオリュー隊長は理由を教えてくれた。


「現在、私を中心にしたあるプロジェクトが進行中だ。傭兵外人部隊から志願者を募っているからお前も入ると良い。プロジェクトに必要な武器、弾薬を集めて貯め込んでいるのだ。コレはフランス政府には内緒で行っている。必要なだけ貯まったら俺達はこの国を出る。プロジェクトの詳細は後日教えてやろう」


 そう言ってオリュー隊長はその場を離れていった。俺は何か楽しい事が始まりそうだと思い、ワクワクしながらその瞬間を待っていた。


 ある日の事だ。俺に緊急招集がかかった。行先はエジプトだ。俺以外に三百名が参加する訓練だという事だったが……

 全員が完璧な武装をして、予備銃、弾薬を持てるだけ携行して来る事と伝えられていた。食料は現地調達の為、水だけを忘れずに持参せよとも伝えられていた。

 エジプトで起こっているテロに対するフランス政府の威嚇作戦行動らしい。初めは使い捨ての俺達が行くのは今さら当たり前なんだが、オリュー隊長が志願したと聞いて、俺はいよいよかとも感じていた。


 集合場所には小さなピラミッドがあった。その前に整列するのは二千九百三十人の傭兵と、後方支援担当の五十人だ。そして、深夜にオリュー隊長の言葉が拡声器を通して俺達に届いた。


「諸君、良く集まってくれた。以前から話していたあるプロジェクトを遂に決行する時が来た。ココで諸君らに問おう。今から行く場所は地球ではない。そう言うと信じられないかも知れないが、コレは事実だ。ソコでは豊富な資源が眠り、怠惰な国民たちが暮らしている。私はソコに攻め込み、一国を支配するつもりだ。主要な者には既に伝えていたが、初めて聞く者も多い為にココで諸君らに選んで貰いたい。未知の場所に出向き、戦闘に寄って国を支配する事を良しとする者はこのまま残ってくれ。しかし、私の言う事が信じられない者はここから立ち去って欲しい」


 そう言うと黙るオリュー隊長。俺は当然残った。傭兵からは凡そ百人が抜け、後方支援担当からは五人が抜けた。それを見届けてから、オリュー隊長が言葉を続けた。


「それでは、残った諸君には今からこのピラミッドに入って貰う。中に入ったら武器、弾薬、戦車、装甲車、装甲バイクがある。輸送用装甲車も用意済だ。先程抜けた者達はフランス政府のスパイだが、慌てる事はない。私達は今から一時間後にはこの場から消えるのだから。さあ、中に入ってくれ」


 俺達は整列してピラミッド内部に入る。ソコにはオリュー隊長が言った通りの物があった。そして、俺達は十の部隊に分けられた。一隊凡そ二百八十人の隊だ。装甲バイクは凡そ千台。戦車は八台。装甲車は二十台。輸送用装甲車が三十台。どうやってここまで運んだのか、フランス政府に見つからずに集められたのは何故なのかなど疑問はつきないが、俺は全ての疑問を打ち消した。俺は人を撃てるなら他に何も要らないからな。

 あっ、女は偶に要るがな。


 それぞれの部隊が与えられた装甲車や戦車、バイクに乗り、徒歩の者も当然出るがそれは何時も同じ事なので誰も不満に思わなかった。そして、オリュー隊長が皆に、


「では、諸君! 未知なる世界に出発だっ!!」


 そう言った時には景色が歪み、気がついたら俺達は見覚えのない渓谷に立っていた。


「成功だっ! 諸君、ここは異世界だ。銃火器は無いが魔術がある。初見では諸君らも困惑するだろう。先ずはどんなものか見せよう。コースケ、盾を構えて私の前に立ってくれ」


 イキナリのご指名だが、俺は素直にジェラルミンの盾を構えて立った。ソコにオリュー隊長が聞いた事がない言葉を唱えたかと思うと前に突き出した両手の間からバレーボール程の火球が飛んできた。が、盾に当たって飛散した。俺は少しだけ衝撃を感じたが、十分に踏ん張れる威力だと思った。


「今のが火の魔術だが、見たように盾で十分防げるモノだ。諸君らは恐れる事なく対処して貰いたい」


 オリュー隊長がそう言った時に一人が質問した。


「何故、オリュー隊長は魔術を使えるのですか? ひょっとして我々も使えるのですか?」


 その質問にオリュー隊長は驚くべき事を言った。


「私が何故魔術を使えるのかと言うと、私は前世でこの世界に生きていたからだ。地球に転生したのだよ。そして、諸君らが魔術を使えるのかと言う質問だが、結論から言えば使える。しかし、訓練が必要だ。今は訓練するよりも圧倒的な武器で先ずはこの国を制圧する事を優先しようと思う。他に質問は?」


 皆は俺も含めて今オリュー隊長が言った事を飲み込めずに、ただただ黙っていた。


「質問が無いようなら進攻を開始しよう!」


 その指揮官の言葉に俺達は進攻を開始した。まあ、先ずは安全な場所の確保からだな。俺は先程の衝撃を既に忘れて、やっと人を撃てるとワクワクしながら進んだのだった。 




  

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