第71話 軍隊の進攻(ラターシ側)
それは突然の事だったそうだ。凡そ三千人の迷彩服を着た武装した男達。自走する棒のついた箱が八台に、或いは車輪が四つ着いた箱に乗り、或いは車輪が二つ着いた変な乗り物に跨って、ラターシ王国の北の渓谷にある対魔獣の王国兵駐屯地にやって来た男達。
一人の男が進み出て、駐屯地の門前で槍を構えた門兵に何事かを話しかけた。が、その言葉は聞いた事がなく、門兵は槍を構えて
「下がれ、何用があってここに来たのだ!」
と、問いかけるが男が喋る言葉を門兵が理解出来ないように、門兵の言葉を男は理解してないようだ。そして、男は後ろにいる仲間に振り向き何事かを言った。すると、一際体格の良い男が返事をした。
それを聞いた男は持っていた棒を無造作に構えて門兵に向けると、轟音と共に門兵二人の頭が弾けとんだ。これには門の内側から様子を見ていた他の兵も驚き、魔術か等と騒いでいたが門兵を殺した男は内側に向けてその棒を構えて、何か操作をした。
騒いでいた兵の一人がまた頭を弾かせて死んだ。
そこに至ってようやく門を閉じる兵達。外にいる男達は悠然と門が閉まるのを待っている。
兵達は門壁の上から矢を射掛け始めた。が、男達は矢の射程範囲外に素早く下がり、当たらない。そこで魔術士が火の魔術を唱えて攻撃した。が、男達が構えた大きな盾に当たって魔術は消えた。
それから、男達の前に棒の着いた自走する箱が二台出てきた。棒の先が門壁に向けられる。先程、返事をした男が何かを言うと、さっきとは比べ物にならない轟音が轟き、門が砕け上に居た兵や魔術士が瓦礫に埋もれて死んでいった。
駐屯地の兵士長は総員撤退を指示して、一人で男達の元に向かった。そして言う。
「私はこの駐屯地の代表者だ。私とそちらの代表者との一騎打ちを望む!!」
しかし、兵士長の前に並ぶ男達は黙って棒を構えて兵士長の体に目掛けて何かが発射された。兵士長はそれを見越して防御魔術を自身の前面に展開していたが、鉄で出来た物が飛んできていると確認した時には防御魔術を突き破って体に穴が開いていた。
頭を狙われて無かったので、死ぬ直前に兵士長は鉄で出来た物を掴み転送魔術で王都に送り、死んだ。満足そうな笑みを浮かべて。
男達は壊した門を乗り越えて駐屯地に入り、建物が無事なのを確認すると、警戒しながら中に入っていく。しかし、既に撤退指示を聞いた兵士達は一人残らずに撤退済だったので、中には誰も居なかった。そこで、あの指揮官らしい男が男達に何かを指示して、建物の一つに入った。
指示された男達は、五人一組で行動を開始していた。ある組は自分達が壊した門の瓦礫を片付け、死体を掘り出している。
またある組は王都に向けた街道方面に進み始めた。
僕がそれを聞いたのは、彼らが現れてから三日ほど過ぎた日の事だった。兵士達が王都に着き、兵士長が送ってきた弾丸から思念を読み取ったんだ。
僕は怒りに震えて自分を抑える事が出来そうに無かったけど、陛下から説明を求められたので、淡々とした声で読み取った思念から分かった事を陛下に説明した。
そして、北にいる国民を直ぐに王都に向けて避難させる様に進言した。兵士を動員して直ぐに動くと陛下も了承してくれたけど、遭遇したら戦闘なんて考えずに直ぐに逃げる様に指示を出して下さいとも言っておいた。
「コルクよ、我が国の兵士はそこまで弱いか?」
陛下にそう聞かれたので、僕は説明をした。
「陛下、彼らが使用している武器は兵士達には未知のモノです。対処出来る者も居るでしょうが、少ないでしょう。彼らに対しては怒りがありますが、取り敢えずは話を僕が聞いてみます。僕は彼らの話す言葉が分かりますから」
「しかし、それではコルク一人が危険に対処する事に……」
陛下は渋るけれども僕は強引に説得した。先ずは国民の避難を優先して行って下さいと言って僕は一旦自分の屋敷に戻った。婚約者達にも話をしておかないとね。黙って行って帰ってきたら絶対に怒られるから。
ソレを考えられる位には僕は自制出来ていたんだ。ここまでは……
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