第68話 農協国家崩壊序曲
僕がコーガイクのやり方を前もって知れたのには理由があるんだ。
実はサクラちゃんの魔法でコーガイクの首脳陣や貴族達を観察していたからなんだ。
サクラちゃんの魔法。
【遠隔操作ドロローン】と、【盗聴ネズミ】の二つが凄かった。
ドロローンは上空千メートルから農協国家各地を撮影出来る。会話も録音出来るスグレモノだ。漢字魔術にも似た魔術があるけれど、そっちは術者だけが見えるのに、ドロローンは録画機能まであって、後から映像を確認出来るんだ。
思うに漢字魔術を創始した人が日本に生きてた時にはドロー○がまだ無かったんだと考えられるんだよね。
ソレと盗聴ネズミ。コレも優秀なんだよ。実際に生きてるネズミを利用するんだけど、サクラちゃんの魔法【ワイヴァイ】によって、盗聴している会話がサクラちゃんが作った魔道具【イーエスデー】に自動録音されるんだ。
コレで僕は彼らの次の動きを掴んだんだ。
僕は境界線に竜級魔術【
ソコにマアヤが転位してきた。
「コルク、向うは終わったわ。全員捕縛して、会社に連行してるから」
「マアヤ、ご苦労様。有難う。コッチはもう少しかかるかな? でも今日中に来ると思うから、待ってからそっちに帰るよ」
僕がマアヤにそう返事をしたら、サクラちゃんの声が聞こえた。
「コルクくん、来たよー。一所懸命に農薬を撒いてるよ」
僕とマアヤはサクラちゃんのいる部屋に行くと、ドロローンから送られてきている映像が壁に写し出されていた。撒かれた農薬はそのまま地面に染み込んでいるように見えるけど、実際にはコーガイクの今回の事に加担している貴族や首脳陣が食べる作物を作っている畑に染み込んでいる。
僕は今回の事に早く決着をつける為にもう一つの竜級魔術を使用していた。それは畑の作物にかけてある。
【
竜級魔術は独特だなと思う。読み方というよりはこじつけになって来てる様な……
きっと途中で面倒に、いや、何も言わないでおこう。強力な魔術なのは間違いないんだから。
この魔術により撒かれた農薬は直ぐに作物に吸収されて蓄積されるんだ。そしてその見た目はツヤツヤで美味しそうに見える。だけど食べたら吐き気や頭痛、下痢になるんだ。
一応、死ぬ事が無いように蓄積される量は制限してあるからね。毎朝、畑からとる作物でサラダを作らせて食べるのも確認済みだし、明日の朝は皆仕事なんて出来ないだろう。
まあ、僕が心配する事じゃないけど。
僕は全てが撒かれて撤退していく人を見ながら、サクラちゃんに言った。
「それじゃ、戻るね。サクラちゃんも久しぶりに向こうに来ない?」
そう、サクラちゃんは本当に現地妻のようにココに居たがるんだけど、別に他の皆と仲が悪い訳じゃないから、たまには向こうにも来て欲しい。
ラターシャお姉さまとカリーナもサクラちゃんを誘う。その誘いを受けてサクラちゃんもその気になってくれたようだ。
僕は皆と一緒に会社に転位した。
会社では縛られた五人の男女がいる。男性三人に女性二人だ。僕は五人に質問をした。
「何でキノコの恵みに来たの? 誰に頼まれたか素直に教えてくれたら悪いようにはしないよ」
そう、縛られているのは二組の家族だった。庶民のね。三人の男性のうち、一人は成人したばかりに見えるから、どちらかの息子さんだろうと思う。
そして、案の定彼らはある貴族に脅されていた。この二つの家族は隣同士で、共同で大きな畑を持っている。そして、一人息子と一人娘は互いに好きあって将来を約束した仲だと言う。
そんな娘が貴族に連れ去られ、言う事を聞かないと娘は死ぬよりも辛い目に合うぞと脅されたそうだ。
コレには僕だけじゃなくて、婚約者達も怒り心頭で、特にカリーナは、
「コルク、早く助けてあげて」
と以前の自分に重ねて心配そうに言ってきた。僕は若い男性に言った。
「僕と一緒に婚約者を助けに行きますか?」
「い、行きます! 俺が必ず助け出します!」
その返事を聞いて僕はその男性の記憶を覗かせてもらって、婚約者が囚われている場所に男性と一緒に転位したんだ。
危機一髪だったよ。正にその貴族がナニをナニしようとしている場面だったから、僕は杖で貴族のナニを叩いて女性から離したんだ。
女性は助けにきた婚約者を見て声を上げて泣いたけど、長居しても良い事はないから、そのまま毛布をかけてまた会社に転位してもどったんだ。
貴族? ナニを叩く時に力を入れ過ぎたみたいで、泡を吹いて気絶してたけど勿論放置してきたよ。
婚約者を助けた事により、どこでも証言すると言ってくれた家族の縛めを解いて、コーガイクに乗り込むまではウチで匿う事になった。
明日、混乱状態のコーガイクに乗り込むから、一日だけになりそうだけどね。
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