第62話 さあ、先ずは事業計画

 そこからのヨーガ様の動きは早かったです。何せ二日後には婚約発表をしてお披露目になったんだから…… どれだけ僕が警戒されていたか……


 少し悲しいです。


 サリー様はウチに居られた間に僕の婚約者達とも仲良くなりました。意外にも、サクラちゃんと意気投合して、熱くクワガタ談議を交していました。


「サリーちゃん、私はオオクワガタの大アゴの形はコノ子が理想だと思うの」


「サクラちゃん、ソレは違うわ! 内歯がこう重なってるコノ子こそ、至高よ」


 みたいな…… 僕がクワガタ好きさん達に交して欲しいと思ってる議論がここに熱く始まっていました。


 そんなサリー様は御年おんとし十四才で、叔母に当たるカリーナよりも年上だから、互いの呼び方はカリーナが、「サリーちゃん」で、サリー様が、「カリーナ姉様」だった。これは皇帝であるサーライ兄上がそう決めたそうだ。皇族って、面倒だよね、色んな決まり事があって。


 勿論、僕も貴族の端くれだったのでそういう事が大事なのは分かってますよ。ただ、ウチ(カインズ家)ではその辺は大雑把だったからね。父上だけに。


 サリー様が居た二日間で、僕を交えて色んな話をしたんだけど、僕の甲虫を庶民の間で流行らせよう計画にとても賛同してくれたんだ。ヨーガ様と一緒に協力したいと言ってくれたから、僕もよろしくお願いしますと頭を下げた。


 僕の中では七年計画だったけど、もっと短縮出来る様にラスティネ皇国とも連携しましょうと話が決まった。


 そう、先ずは忙しい庶民の子供達を家のお手伝いは別にして、仕事に匹敵する作業から解放しなきゃいけない。そこで、僕は今ある商工ギルドの仕組みから変えて行く事を考えたんだ。

 何せ僕は商爵あきないしゃくだからね。イジイさんとサクラちゃん、二人の渡り人と協力してたたき台を作ってから、ラターシャお姉さまに見て貰う。

 そして、いきなり変えては反発が大きい部分を指摘してもらって、また計画を練り直すを何度か繰り返して、ようやく合格が出た。


 そして、国王陛下の名前で商工ギルドの代表や理事運営幹部を集めて貰って、新しい仕組みに移行して貰う為に話合いの場を設けたんだ。


 僕の説明を聞いた代表が質問してきた。


商爵あきないしゃく様にお伺い致します。コレによって何が変わるのでしょうか? 私には既存の仕組みと何ら変わる事が無いように思えるのですが……」


 そう、仕組み自体は大きく変えてない。それは年数を掛けて変えて行くつもりだから。けれど、一つだけ変えている点がある。

 それは、各お店や職人さん達の営業や仕事時間の設定と、休日制度だ。

 それによって時間的な余裕が生まれてくる筈なんだよね。今は各お店、職人さん達は自分達で営業時間や仕事時間を決めている。

 ソレを商工ギルドが主体となって、お店の営業時間を決めてソレを守って貰う様に指導していこうという話なんだ。


 勿論、宿屋さんなんかは休日を設けたりは出来ないけど、ソコも交代要員が居れば働いてる人が休日をとれる様になるから、その人員の手配なんかを商工ギルドで行うというのも今回の話で出している。


 そして、いきなり全てが無理な事も承知しているから、先ずは皆に意見を聞いて賛同してくれるお店や職人さんから変えて行きましょうと代表に説明をしてみた。


 僕の言葉に少し考えていた代表は、


「うん、何がデメリットになるか現時点では判断出来ないですが、やって見るのも良いかと思います。そして、今直ぐにではなくその為の人材の教育を商爵あきないしゃく様が行って下さり、その教育を十分に受けた者が育ってからというのも、私達には受け入れ易い理由です。いては事を仕損じると言うのが、我々商工ギルドの標語ですから」


 そうして、先ずは商工ギルドの理解を得る事に成功した。

 次は狩農漁業しゅのうぎょぎょう組合だ。

 

 こちらはかなり手強いけど、説得する為の材料は揃っている。僕はまたヨーガ様を通じて陛下に動いて貰い、狩農漁業しゅのうぎょぎょう組合の代表と運営理事達を集めてもらった。

 

 さあ、頑張るぞ!!


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