第58話 ハラード・ヒーマン伯爵
皆は勿論覚えているだろう。この俺様、あのカインズ公爵家の嫡子であるボトル・カインズをあと一歩の所まで追い詰めたハラード様を。
残念ながら馬鹿な二人の身内のせいで伯爵にまで落ちぶれてしまった俺様だが、天は俺様を見捨てて無かったようだ。
今はいけ好かないバーモンのヤツが俺様の後見人となっている。アイツはダメだ。俺様を見て言った一言が、
「良いか、お前はもう既に公爵家の者ではない。伯爵だ。よって、私よりも位が下なのだ。私は口出しはしないが、迷惑をかけるなよ。成人したらとっとと出て行って貰うからな」
だった。この野郎と思ったが賢明な俺様はグッと我慢した。今は俺様の母親に言ってヤツを籠絡させようとしているが、あまり上手く行ってない。
まあ、期待はしてなかったが。俺様の母親は俺様が王から治めろと言われた土地に行くのがイヤで、必死になっているが、まあ無理だろう。馬鹿だからな。
そして、俺様は無くなった資産を復活させる為に日々、知恵をこらして稼いでいた。
先ずはバーモンの使用人達から賭博好きなヤツを集めてカードを始めた。掛け金は少な目にしてあるから皆が容易く乗ってきた。
何せ銅貨五枚ずつだからな。しかし、それも塵が積れば山になる。俺様は馬鹿じゃないから自分も適度に負けながら着実に増やして行った。
銅貨百枚(銀貨一枚)になったら、今度は町に行って馬鹿な庶民を相手に賭け事を持ちかける。そして貯まった銅貨千枚(銀貨十枚)で奴隷を一人購入した。十二才の薄汚れた女だ。その女を教育して、俺様は貴族の使用人達に売り込みする。
一回銀貨一枚でどうだと。三人に一人は話に乗ってくる。俺様の手元にはアレよアレよと銀貨百枚(金貨一枚)が貯まった。
しかしながら当然足りない。俺様は泣き叫ぶ女奴隷を更に働かせる。同時に賭博も続けていたから、次の奴隷も購入する。一人目は二百回で壊れたので、捨てた。二人目は中々強かな女で、受取る金を銀貨一枚と銅貨二十枚にして銅貨を自分のモノにしているようだ。
今は見逃しているが、貯まったら勿論俺様のモノになる。精々頑張って貯めて欲しい。
そして、三人目、四人目と奴隷を増やして今や五人の奴隷で稼いでいるので、銀貨はもうすぐ二千枚(金貨二十枚)になる。
だが、まだまだ足りない。俺がもっと大きく稼ぐ方法がないかと模索している時に朗報が耳に届いた。
何とカインズの次男コルクが叙爵されて、新たな爵位【
ソコで俺様は思った。ヤツの爵位は名前からして明らかに伯爵より下だろう。それなら、俺様がヤツに命令して儲けの八割を俺様に寄越すように言えば、俺様の資産は爆発的に増える筈だ。
注意すべきはヤツの実家のカインズが出てくる事だが、賢明な俺様は既に誓約書を作って、契約書に偽装済だ。
コルクの馬鹿が俺様の話に乗ってこの契約書にサインすれば、ヤツのモノは俺様のモノになる。クソ生意気に婚約者も五人も居やがると聞いたので、全て奪って奴隷として稼がせよう。
俺様は完璧な計画を立てた。コレであのクソ国王やカインズのヤツらをぶっ潰す段取りが出来た。
高笑いが止まらない俺様だった。
以上、自分で自分の首を絞める準備を嬉々として始めた哀れな少年の思いでした。
次回、ヒーマン伯爵、荒野に散る!(仮)
乞うご期待!!
タイトルは予告なく変更される場合がございます。ご了承下さい。m(_ _)m
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