第55話 第二渡り人発見

 固まってる僕をツンツン突くサクラちゃん。それを止めようとするマラヤ。横で笑って見ているカリーナ。そこまで認識して僕はハッと正気に戻った。


「ひょっとしてサクラちゃんも?」


「あ、やっぱり渡り人なんだね。だって、コッチの世界の人はクワガタムシって言わないモノ」


 ああ、それもそうか。元々和名のクワガタは武将が被っていた兜の鍬形からきているからね。

 しかしイジイさんに続いて二人目に出会った。僕はサクラちゃんに聞いてみた。


「サクラちゃんもやっぱり日本からなの?」


「うん、そうだけど。私は日本に住んでたけど実は国籍はフランスなの。父が駐日大使で、私は父の秘書として一緒に日本に来ていたの。ソコで日本のクワガタムシに魅せられてしまって、コッチに転生したけど、こんなパラダイスな村に転生出来て良かったわ」


「あの、言い難かったら言わなくて良いけど……」


「あ、亡くなったのはね。休日に某県にオオクワガタ採集に行ってて、台場クヌギに登ってオオクワガタのオスを掻き出した瞬間に、喜びのあまり立ちあがってしまって、そのままバランスを崩して頭から落ちちゃったのが原因なの」


 明るくニッコリ教えられて返事に困る僕。そして、呆れたような顔をしているカリーナとマラヤ。


「それで、コルクくんはクワガタムシを求めてこの村に来たんだってね。この先に樹液酒場があるから成虫を見られるけど、行ってみる?」


 サクラちゃんはそう教えてくれた。


「え、良いの? 普通は秘密なんじゃ」


「エヘヘ、だってこの村のクワガタ好きな子達は、今は採集よりも累代飼育がメインになってるからね。大丈夫だよ」


 僕はサクラちゃんの言葉に甘えて樹液酒場に案内してもらった。そしたら、いるいる。


 アチコチの木から樹液が出ていて発酵しているから、甘い匂いが充満している。ソコで僕は気になっていた事をサクラちゃんに聞いた。


「この村は四季ってあるの?」


「ううん、ここはね沖縄県をイメージして貰うと分かりやすいかな? 他所が雪が降るような季節でも、気温は二十度以下にはならない土地だよ」


「あ、じゃあここのクワガタは冬眠しないんだ」


「それがね、不思議な事に冬眠するんだ。私が調べた限りでは、コクワガタ、ヒラタクワガタ、オオクワガタは間違いなく冬眠で越冬してる。寒くないのにね。他にも日本のクワガタとは形は同じでも違いが色々あるよ」


 うん、サクラちゃんが欲しい。僕がそう思った時にマラヤが、


「香りが強くなった、コルくん、また増やすの?」


 と言ってきた。

 何を言ってるんだい、マラヤ。僕はサクラちゃんの才能が欲しいんだよ。女性としては少ししか意識してないからね。


 ソコでサクラちゃんから思わぬ言葉が出た。


「うん、私もコルクくんなら良いよ。色々と楽しそうだし、現地妻になっても良いよ」


 カリーナさん、マラヤさん、ジト目で僕を見ないで下さい。僕からは何も言ってませんよ。


「まあ、コルクだからしょうがないよね、マラヤちゃん」


「そうだね、カリちゃん」


 二人で妙な納得をしないで下さい。


「ところで、サクラちゃん。コルクの婚約者になるには後二人に納得してもらわないとダメなのよ。だから、一旦一緒に来て貰えるかな? ラターシ王国まで」


「うん、問題ないよ。じゃあ、私の研究成果も向こうで教えるね。よろしくね、コルクくん」


 ソコでサクゾウさんが、


「良がったなあ! サクラ。これでオメェも幸せだ!!」


 と男泣きしていた……


 うん、取り敢えずは一旦家に帰って色々と整理しないとダメだね。


 何故か僕が動く度に婚約者が増えて行くんだけど、どうしてか誰か教えて下さい……… 

  

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