第54話 マッシイ村で見つけた神童

 さて、今僕はマッシイ村にいる。隣にはカリーナとマラヤが一緒に来ていた。マアヤとマキヤはムシがアウトらしい。まあ、普通はそうだよね。


 しかし、この村は何て良い村なんだ。村人皆が僕達に丁寧に挨拶をしてくれて、コレを食べなってオヤツをくれる。フライドポテトがあったのにはビックリしたけどね。


 聞けば一人の女の子が作った料理で、またたく間に村人に流行ったそうだ。その女の子は変わっている子で、クワガタムシなんかの生態を研究しているそうだ。ただ、三才から魔法が使えて、読み書き計算を大人顔負けで出来るので、神童と呼ばれているらしい。現在は八才でマラヤと同い年だ。

 ソコでマラヤがボソッと呟いた。


「危険な香りがコルくんからした……」


 いや、会ってもないのにソレはないよ。マラヤのセンサーはどうなってるの?


 その子の事も気になるけど、今はヒラタクワガタ、オオクワガタ以外のクワガタムシとカブトムシだ。僕達は原木栽培している農家さんが、キノコが出なくなった原木を廃棄している場所に案内してもらった。


 その廃棄場所は村の裏手にある林の中で、原木がキレイに積み重なっているのは最近になって廃棄された物。崩れているのはニ〜三年経った物。土に還ってるのは何年も経った物だ。


 先ずは土になってる場所を木の枝を使って少し掘り起こして見た。そしたら、いたいた。


 コクワガタ、ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタ、カブトムシ(日本)が、それぞれ場所が別れているけど数多く見つけられた。


 それから、崩れている場所の原木を手で割いて見たら、新成虫がいた。シイタケの原木からはコクワガタやノコギリクワガタ、ヒラタクワガタが。ヒラタケやオオヒラタケの原木からはオオクワガタが多く見つかる。

 これら成虫のエサ場は何処なんだろうと思っていたら、林の奥から声が聞こえてきた。


「どうだ! サクラ。コレがお前が育てたヒラタクワガタを抜いた俺のクロガネだ!!」


「ウザい。こんな所まで見せに来なくても良い。家で見せれば良いのに。それにその子は羽化不全を起してる。可哀想に……」


「へんっ! 悔しいからってそんな事を言ってもダメだぞ! 俺のクロガネは十センチを三ミリとはいえ超えたんだからな!!」


「ガジロウ、幼虫期のエサに砂糖を混ぜたね。アレは確かに体が大きくなるけど、羽化不全の原因になるからダメだって教えてあげたのに」


「羽化不全だろうと、体長が大きい方が勝ちだろう! だから、お前の調べた事を全部俺に教えろよ!」


「無理。分かってて羽化不全を起こす様なヤツにはもう何も教えないから」


「なにをーっ! サクラ、いくら村で神童って言われてても、親兄弟が居ないお前を村から追い出すなんて簡単なんだからな!!」


 うん、不穏な会話だね。カリーナとマラヤが僕をツンツンと突く。ハイハイ、分かりました。出番ですね。


「あの〜、ちょっと良いかな?」


「あんっ、誰だ、お前は?」


 威勢と体格の良い十才ぐらいの男の子が声を掛けた僕を見てそう言った。

 その瞬間だった。


「こんの! ゴンタクレがぁーー!!」


 ここまで案内してくれたサクゾウさんが、ガジロウくんに拳骨げんこつを落した。


「ぐああー! 痛えー! サクゾウ爺、何をするんだよ!」


「バカたれが! このお人は村の救世主じゃ! そんお人に無礼な口ききをしおってからに! お前を村から追い出すぞ!」


 鬼の形相でそう言うサクゾウさん。ニコニコしていた時は好々爺だったのに、一転して歴戦の戦士もかくやと言わんばかりのオーラが全身から立ち昇っている。


「サクゾウさん、帰ってきたんだね。お帰りなさい」


 サクラちゃんがそう言うとまた好々爺モードになったサクゾウさん。


「おお〜、サクラよ、爺が帰ってきたぞ〜」


 うん、凄い変わり身の早さだ。僕達が呆気にとられていると、ガジロウくんがクソ、覚えてろよって捨て台詞を言って走り去った。


 逃げ足早えー。感心してしまった。

 そして、サクラちゃんがサクゾウさんに話を聞いている。どうやら僕達の事を話しているようだ。


 そしてトコトコと僕達の所に歩いてきたサクラちゃんはいきなり爆弾をぶっ込んできた。


「ねえ、貴方も【渡り人】なの?」


 僕はビックリして固まってしまったんだ。



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