第53話 キノコ祭りと新事業
さあ、大変だ! 前世の記憶通りのクワガタムシが目の前にいる。ヒラタクワガタとオオクワガタだけど、この分だと他のクワガタムシもいるんじゃないかな? 僕は興奮した口調でヨネお婆さんとアイさんに聞いてみた。
「あの、あのっ! この二種類しかいないんですか? 違う形をしたクワガタムシはいませんか!?」
僕の興奮が面白かったんだろう。ヨネお婆さんとアイさんはニコニコしながら教えてくれた。
「勿論、違う形のもおるよ。けんど、孫がオトコならコレじゃって言うから、このヒラハサミムシを持ってきたんじゃ」
ハサミムシ。それは前世では違う虫だ。僕はサーライ兄上に聞いてみた。
「サーライ兄上、ラスティネ皇国ではこの虫をハサミムシって言うんですか?」
「ん、イヤイヤ。虫の名前は見つけた者がその特徴から勝手に名付けてるよ。確か違う村ではカミキリムシって呼ばれてたよ。それがどうかしたかい?」
それも又違う虫なんだよなぁ…… 僕のエゴかも知れないけど一つお願いしてみよう。
「サーライ兄上、これからこの形をしたムシはクワガタムシだと皇国で皇帝としての決定だと発表して貰えますか? それと違う形をしたムシがいると思うのですが、それは僕が直接マッシイ村に行って探します」
僕の勢いこんだ様子に圧倒されたように了承してくれた。他国の皇帝陛下にこんな事をお願いするなんて、状況によっては不敬罪になりそうだけど、サーライ兄上は笑って許してくれた。
そして、今日皆さんが帰る時に僕も付いて行く事が決まり、時間も昼を少し過ぎた辺りになっていたので、皆さんを中庭に案内した。
ソコではイジイさん指導の元に完成されたキノコ料理の数々と、網焼きされたり、鉄板焼きされてキノコがとても良い香りを放っていた。
中央のテーブルではこの国の国王陛下がテーブルに突っ伏して潰れていたが、気を利かせたミランダ様が直ぐに兵士を呼んで足を持って引きずらせて、家の中に入れてくれた。
最近、陛下の扱いがひどくなったと少しだけ反省する僕がいた。
そして皆さんを見てみると、
「なっ、何だっペよー、この料理は!」
と、マイタケ栽培のタケゾウさん。
「ワ、ワダスのシイタケが網で焼かれてるべっ!」
と、ヨネお婆さん。
どうやらキノコを焼くという事をした事が無かったそうで、いつも煮物料理だったそうだ。
それ以外にも、キノコを利用した料理の豪華さに皆さんが驚きながらも美味しそうに食べている。
何より、サーライ兄上、サーパさん、カリーナが衝撃を受けていた。
「「「キッ、キノコがこんなに美味しいなんてっ!!」」」
フフフ、どうですか? ラスティネ皇族の皆様。僕とイジイさんが知恵を絞ってウチの料理人達が仕上げた料理は。
勿論、ウチの家族や使用人達も一緒に食べている。使用人達は悪いけど交代しながらになってるけどね。でも皆が美味しいって言ってくれてたんだ。
ソコで僕はイジイさんにクワガタムシを見せてみた。
「はりゃあ~、オオクワガタじゃぞい! コッチの世界にもおったのか! それにしても大きいのう。地球じゃあ八センチぐらいだったが、コイツは九センチを超えておるのう。凄い迫力じゃぞい」
イジイさんも目をキラキラさせてオオクワガタを褒めてくれた。そして僕は計画を話す。
恐らくクワガタムシがいるという事はカブトムシもいると思う。そこで、この世界の子供達を対象にして、クワガタムシやカブトムシのペット飼育ブームを起こそうと思っているんだと話してみた。
するとイジイさんが少し渋い顔をしながら言った。
「コル坊よ。貴族の子供なら生活に余裕もあるから飼育出来るかも知れんが、庶民の子供は家の手伝いや兄弟の面倒なんかを見ているから、飼育する暇なんてないと思うぞい」
そう、それは確かにイジイさんの言う通りなんだけど、庶民の子も一日中手伝いをしている訳じゃないと思うんだ。夜寝る前にエサのゼリーを上げたりなんかは出来ると思うんだよね。
あっ、昆虫ゼリーはこの世界には無いから作って売るつもりです。うん、飼育キットとかも作って売れるだろうし。
何より、散歩なんかの手間がかからない分、忙しい庶民の子にも受け入れられるって思うんだけどな。僕がそう言うとイジイさんが、
「販売をするなら金額によると思うぞい。安すぎても高すぎてもダメだぞい。そこら辺も考えられる人材が必要になるぞい」
とアドバイスをくれた。そこで僕は先ずはマッシイ村に行って他のクワガタムシやカブトムシを見てくる。それから計画書を作って父上と
最近、何故か忙しいなぁ……
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