第51話 VSイジイさん!?(サン)
食材は揃った。しかし、コチラでは精米技術は前世程よくない。ソコで僕は前世の知恵を使って精米する事にしてみた。
そう、精米機を作ってみたのだ。圧力式にしたいけど仕組みが分からないから、撹拌式にして三升まで精米出来る形にしてみた。
精米したてのお米は美味しいからね。何回か試運転をしてみて八分精米が良いと思ったので、明日は作る直前に精米する事にしたんだ。
コレで準備は整った。いよいよ明日だ。
そして、翌朝。僕は朝食を食べ終えると、醤油を仕込んでいる地下室に向かった。既に何度も仕込み終わり、今は地下室に樽と瓶に入った醤油が並んでいる。
無印の瓶に入れてあるのは町の食事処やレストランに安価で卸している。
カインズ公爵家の家紋を入れてある瓶は、貴族に高値で卸していた。その得た収入は領民の為に使われている。孤児院を増やしたり、領兵の給与アップ、それから公共事業費用にしたりしてます。
僕は秘蔵の一本を手に取って地下室を出た。まあ、秘蔵って言っても僕が三姉妹と四人だけで仕込んだって話なんだけどね。
そして調理室に入るとイジイさんが居て、仕込みを始めていた。僕を見たイジイさんが言う。
「カッカッカッカッ、コル坊。真のマツタケご飯を見せてやるぞ」
それに僕も返事をした。
「フフフ、イジイさんに美味しすぎて腰を抜かす様なマツタケご飯を食べさせてあげますよ」
二人の間にお互いのオーラがバチバチと火花を散らしていた。(目には見えないけどね。雰囲気です)
そして僕も仕込みに入る。先ずはゴボウだ。包丁の背を使って軽く皮を落としてささがきにする。水を張ったボウルに一本分のささがきが出来たら水を捨ててキレイな水に入れ替える。それを二回。
そしてニンジンだ。こちらは長さ五センチ太さ二ミリで切って行く。コチラも水に少しだけ晒してザルに上げて水を切る。
そして親鶏。今回はモモ肉を使用する。少し硬いから一口大に切ったモノに隠し包丁を入れておく。
お米は作った精米機で精米(八分)して、最初はさっと洗って直ぐに水を捨てる。次は柔らかい手付きでお米同士を擦って洗う。それを二回。そしてここで裏技浸す水にゴボウを先に入れておく。ゴボウの風味も活かしたいから。
そして待つ事一時間半。いよいよ主役の登場だ。マツタケは大きいモノは半分に切って手で割いて入れる。
うん、この時点でヨダレが……
我慢して上からニンジンと親鶏を入れて、マイタケとホンシメジをマツタケの半分の分量で入れる。
そして醤油を入れて、隠し技でハチミツを大さじ一入れる。フッフッフッ、完璧だ!!
今回は七合炊く。僕のもイジイさんのも一人半合ずつ食べて貰い、どちらが良かったか選んで貰うんだ。
審査員は、
果たして決着は……
お昼ご飯に出てくる二つのお皿。公平に判断して貰う為に皆にはどちらのお皿が僕なのか、イジイさんなのかは伝えてない。まあ、料理長と副料理とメイドさん二名は材料を知ってるからバレてるけど。
今回、マアヤ、マキヤ、マラヤが参加しなかったのは、調理を手伝って貰ったから。皆には美味しいと思ったお皿を自分の前に置いてねとお願いしたんだ。
僕は自分のを先ず食べてみた。完璧な出来だったね。勝利を確信してイジイさんのを食べた。
衝撃が走った。何て芳醇な香りなんだ。マツタケの香りが口一杯に広がって口福を感じる。僕は負けたと思った。僕はイジイさんのお皿を自分の前に置いた。
しかし、意外にもイジイさんが僕の方のお皿を前に置いている。その顔は打ちひしがれていた。
そして、他の人達は、
「コルク、これは選べない!! 私にはどちらかを選択するなんて無理だ!」
と
僕はイジイさんと顔を見合わせた。そして、先手を切った。
「僕の負けです、イジイさん。イジイさんの方がマツタケの香りが高くて、これが真のマツタケご飯だと僕は思いました」
しかし、ソコでイジイさんから反論が。
「イヤ、コル坊。わしの負けじゃぞい。確かにわしの方がマツタケの香りは高い。しかし、それだけじゃ。【香りマツタケ味シメジ】と言う様に、コル坊が作った方が全てにおいてわしのより美味かったぞい」
「イヤイヤ、イジイさんの方が……」
「イヤイヤ、コル坊の方が……」
互いに今度は負けを譲らない状態になったが、ソコで料理長が、
「あの〜、両方とも勝ちで良いんじゃないでしょうか? そして、両方ともお出しする事にしましょう。コレはカインズ公爵家の料理長としての決定事項です」
と鶴の一声を放ち、結果は両方勝ちで決まったのだった。
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