第50話 VSイジイさん!?(ニ)
僕が選んだ農地は草が生えてる方だ。雑草が一本も生えてない農地は何か違和感を覚えてしまって、植えられている作物がツヤツヤなのも、感覚的に不気味に思ったからだ。
そう母上に言った時だった。僕達に向かってキレイな農地から誰かが走ってきた。
「リーン様、お越しいただきまことに有難うございます!」
ハアハア言いながらとても農夫さんには見えない恰好をしたオジサンが挨拶してきた。けれども母上はそれには答えずに僕に質問してきた。
「コルくんはコッチの農地は感覚的にダメだって言ったけど、それを感覚じゃない言葉で説明出来るかな?」
うん、コレはこのオジサンに聞かせたいのかな? 僕は素直に【
※キレイな農地
劇薬を使用して雑草や害虫を殺している。土壌は最悪で、その劇薬を吸っても枯れない農作物は見た目はツヤツヤして美味しそうに見えるが、人体に影響がでるレベルで危険。
※雑草が見られる農地
人の手と、自然産物を素にした薬品を使用して、雑草や害虫に対処している。土壌豊かで農作物に必要な栄養素がたっぷりと含まれているため、見た目が少し悪くても味が良い。
※農地の境目
境界魔術で何とか劇薬を防いでいる状態だが、徐々に劇薬が侵攻してきている。危険。
「母上、父上に言ってこちらの農地は今すぐ廃棄すべきです。そして、土壌改良をするか今ある土は全てを取り除いてしまうべきです。早急にしないと領民が危険です」
僕が慌てながらそう言うと、オジサンが僕に怒ってきた。
「なっ! 何を根拠に言ってるんだ、このクソガキがっ!! ウチの農作物は皆の健康を保つ働きがあると、我が国では有名なんだぞ!」
ソコで母上からユラリと
「ゲイレン、貴方は確かコーガイク農協国家では男爵よね? ラターシ王国のウチの領地で、ウチの息子をクソガキ呼ばわりして無事に済むと思ってるのかしら。それに、こちらの農地のガーリッケさんから苦情が出ていたのよ。貴方との契約内容はコチラの農地に迷惑をかけないだったわね。幸い、まだ我が国では貴方が作った農作物は流通してないから、公爵家の権限において、たった今、貴方と貴方の使用している農地と農作物を凍結します」
「なっ、リーン様。そんな…… そんなご子息とはいえ、こんな子供の言う事を信じられるのですか! 失礼ですが、私も農協国家で一流の教育を受けた意地が有ります。ソレに食べて貰えればウチの農作物がどれ程美味しく、栄養価が高いかお分かりいただけます!!」
「ですって、コルくん? どうかしら?」
「僕は国や領民に毒を食べさすつもりは一切ありませんよ、母上。既に植わってる農作物は言葉通りに凍結しました。一個だけ生で食べられるのを置いてますから、コチラの方に食べてもらいましょうよ。何事もお手本は必要ですし」
そう言って僕は一つだけ凍結させなかったトマトをもいで、ゲイレンの手に乗せた。
「さあ、貴方ご自身で証明して下さい。この一個のトマトには、凍結したトマトに入っていた劇薬成分を集中させました。凡そ一年間、貴方の作った農作物を食べたら出る影響が直ぐに出る様になってる筈です。貴方が言う様に美味しく栄養価が高いだけなら食べられますよね?」
僕がそう言うとゲイレンの顔は真っ青になって、トマトを放り投げて逃げようとしたから、足を凍結させて逃げられない様にした。
「フフフフ、陛下やヴァンを騙して逃げられるなんてあり得ないわ。さあ、コレであのお高く止まった農協国家に堂々と文句を言えるわ。有難う、コルくん。ソレと証拠になるから、ここの土と農作物はそのまま保管して欲しいけどお願い出来るかな?」
勿論ですよ、母上。それに、侵攻されかけた境界魔術は僕の魔術で完全にシャットアウトしましたから、ガーリッケさんにお伝え下さいね。
僕は母上にそう言うと、さすがコルくんだわと抱きしめて貰えた。うん、役得だぁ。
それから帰ってからモロモロの手続きをする事にして、ガーリッケさんに会った。
作られてる野菜はとても素晴らしい出来で、ニンジンとゴボウ、ソレにお米を分けて貰った。
その時に隣の農地は方が付いたら土壌から劇薬を全て取り除く事をカインズ公爵家として約束した。
最高の食材を母上のお陰で仕入れる事が出来たぞ! これで明日は伝説を超えて見せる!
僕はやる気(炊く気)に満ちていたのだった。
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