第48話  今後の事

 僕が七才らしからぬ返答をしたせいでおかしな空気になってしまったけど、そこを母上が救ってくれた。


「あら、コルくんは確かに私がお腹を痛めて産んだ今年で七才になる子ですよ? お疑いですか、皇帝陛下?」


 ニッコリ笑ってそう言う母上の目は笑ってなかった。怖い……


 皇帝陛下も危機を感じたのか、


「イヤイヤ、リーン殿。疑ってなどおらぬぞ。七才とは思えぬしっかりとした返答に少し戸惑っただけでな」


 そこで父上が母上を諌めるが、そこは母上が上手だった。


「あら、ヴァン。聞いて無かったの? 皇帝陛下はコルクの兄上になるのよ。ていう事は私達の子供と言っても差支えないじゃない」


 イヤイヤ、母上。皇帝陛下は明らかに貴方より年上ですよ。父上よりも少し上だと思います。それを我が子って……

 

 しかし、その理屈に飛びついたのは意外にも皇帝陛下自身だった。


「その通りだな、リーン殿。私はカインズ公爵家の長兄として、ラターシ王国に来た時には振る舞おう!!」


 ダメだこの人。僕がカリーナを見ると、諦めたような顔をして見返されてしまった。どうやらこういう性格の人のようだ。そして、そこで国王陛下が要らぬ口を挟んだ。


「待て待て、サーライ殿。それは困る。余よりカインズ公爵家と仲良くなってはならぬ!」


 うぉい! ソコですか? 陛下? 違うでしょう? そして反論する皇帝陛下。


「ムム、我はカリーナを通してカインズ公爵家とは身内になる故に、いくらサンテミリ殿とは言え、ここは譲れませんな!」


「何を、それを言うなら余はカインズ公爵家の嫡子と余の娘が婚約しておる故に立場は余の方が上じゃ!」


 うん、国を治める二人が不毛な議論をしているよ。それを止めたのはヤッパリ身内だった。


「サーライ兄様、それ以上駄々をこねるなら、サーパ兄様に言ってイジイ様のお料理を再現するのを止めてもらいますわ!」


「父上、母上に言いつけるよ!」


 二人とも、ピタッと言い争いを止めて肩を組んで笑いあったのには、ビックリしたよ。この変わり身の速さがないと国を治めたり出来ないんだね。(笑)


「ハハハ、冗談だよ。カリーナ。私はサンテミリ殿とは昔から仲が良いんだからな」


「ミレー、ミランダに言いつけられるような事は何もしておらんぞ、父は」


 うん、まあ仲良いんならよろしいんじゃないでしょうか。


 それから、やっと本題が始まった。


「実はな、魔術学園から苦情がきてな…… 三人が余りにも優秀過ぎると、学園の教師全員から嘆願書まで届いてな。困っておるのじゃ」


「ほう、サンテミリ殿。ボトル殿やミレー殿だけならば分かるが、我が妹までも含まれているのか?」


「そうなんじゃ。どうやらカインズ公爵家の家庭教師がかなり優秀なようでな。既に最上級生が学ぶ課程を終えていて、寧ろ研究職についた専門家でなければ答えられないような質問をしてくると、教師陣がビクビクしておるそうじゃ」


 兄上、ミレーお姉様、カリーナ、やらかしましたね。ラターシャお姉さまから散々、言われていたのに。ここで教えている事のレベルはどの程度か学園に行ってない私には分からないから、あまり不必要に質問とかはしないようにって。


 僕がジト目で三人を見ると、三人揃って目をそらした。自覚はあるのね。


「そこでじゃ。ヴァン、もう三人とも学園の卒業証書は出すから、あとはお前の家で勉強させてくれ。頼む」


 そう言うと国王陛下は父上に頭を下げた。父上の返答は、


「まあ、生きる伝説【疾風はやてのラタ】が良いって言ったらな。ロトルア」


 だった。それを聞いた両陛下が、


「何と! あの【輝く美貌のラタ】だと言うのか!?」(国王陛下)


「何い! 【戦神乙女かみのけしんのラタ】がカリーナを!?」


 うん、えーっとラターシャお姉さま自身も知らないであろう二つ名が出てきたようです。ソコには敢えて触れないでおきます。


 そして、決まったのは


 三人とも、学園卒業。(通ったの三日で)

 三人とも、望むなら冒険者登録を許可(十二歳からが本来の条件)

 三人とも、カインズ公爵家で勉学を続ける


 がその場で決定した。最後に皇帝陛下から、


「ヴァン殿、リーン殿、ボトル殿、コルク殿。来れる時で良い。一度、我が国にも来て頂きたい。我が国では魚料理が自慢でもあってな。是非一度食して頂きたいのだ。あっ、その時にはエクスワ・イジイ様もご一緒に来て頂けると思っているぞ」


 そう声をかけられて、会談はお開きになった。


 後から聞いた話です。

 兄上は学園を卒業出来てホッとしたそうです。上級生の男性からは決闘を迫られ、化粧臭い(兄上は化粧の臭いが嫌いです)女性からは交際を迫られ、辟易へきえきしていたそうです。


 良かったですね、兄上。

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