第47話 何故か陛下に呼ばれました

 僕が懐から出したのは指輪。カリーナさんをイメージした紅色を着けた合成石を嵌め込んである。


 正解か? 僕が緊張していたら、マアヤが、


「ほら、カリーナ。私が言った通りだったでしょう?」

 

 そうカリーナさんに言い、マキヤも、


「やったわね。カリーナ。これで私達と同じよ」


 と言う。ん? 私達と同じって……


「カリちゃん、負けないからね!」


 これはマラヤで、その後三姉妹揃ってカリーナさんにある言葉を掛けた。


「婚約、おめでとう! カリーナ!」


 えっと、アレ? 皆、反対してたよね。それがどうしてこうなったの? 僕は顔をニコニコさせながら、頭の中をフル回転させていた。


 カリーナさんは顔を渡した指輪の様に真紅まっかにして、わずかに涙ぐみながら、


「有難う、みんな。認めてくれて。それから、コルク様、不束者ふつつかものですけど、よろしくお願い致します」


 そう言って僕に頭を下げたんだ。

 

 んーと、コレってアレだ。対戦の後の女子会で決まった話だったんだね。女子だけで。で、マアヤは僕がそれに気がついて、ちゃんと対応するってカリーナさんに言ってたんだろう。


 …… 危なかった。ここで指輪を出さずにネックレスや腕輪を出していたらきっと大変な事になってたんだろうね。僕は自分を褒めましたよ。盛大に、心の中で。【僕! グッジョブ!】


 二瞬程で頭の中でそう考えて、カリーナさんに僕は言ったんだ。


「皆と仲良くなれて良かったよ。カリーナ、婚約者なら様はおかしいから、僕のことも呼び捨てで呼んでね。僕もいたらない所が沢山あるけど、よろしくね」


 こうして、僕には四人の婚約者が出来ました。めでたしめでたし……


 で、終わる訳もなく、カリーナさんが兄上とミレーお姉さまと一緒に魔術学園に通い出してから三日。何故かミランダ様を通じて陛下に呼び出されました。


 僕、何かやったかな? 不思議に思ってミランダ様に聞いてみたら、


「フフフ、大丈夫よ。コルくん。悪いようにはならない様に陛下には釘をさしておいたから」


 と確約してくれたので、安心して母上と一緒に王宮へ向かったんだ。


 王宮に行くと陛下の私室に案内された。そこには何故かカリーナと兄上、ミレーお姉様がいて、もう一人、見た事がない壮年の男性がいた。

 陛下が母上と僕に声をかけてきた。


「おお、リーンも来たか。丁度良い、今ヴァンもこちらに向かって来ておるから、揃ってから話を始めよう。それと、コルクよ。ミランダから受け取ったぞ。感謝する、が、出来れば余の他のきさきや子らにも……」


 陛下がそこまで言った時に母上が遮った。


「ロトルア、それはダメだわ〜。お渡し出来るのはヨーガくんだけね。ね、コルくん」


 母上、そこで僕に振らないで下さい。僕にはハードルが高いです。でも、僕も同じ気持ちなので黙って腕輪を一つ出して陛下にお渡しした。腕輪の合成石の色は落ち着いた銀色。


 僕が一つしか渡さなかったので、陛下はハアーと大きくため息をつきながら、仕方ないかと呟かれた。


 そして、文官を呼んでヨーガにコレを渡して来るようにと伝えて下がらせた。入れ替わりに父上が部屋へとやって来た。


「呼んだかロトルア? 何の用だ?」


 私室だからか呼び捨てで部屋に入るなりそう言う父上。そして僕や母上、更には兄上、ミレーお姉様、カリーナに見知らぬ男性が居るのを見てギョッとしていた。


 そこで見知らぬ男性が陛下に声をかけた。


「失礼だが、質問したい。サンテミリ殿。そちらの奥方と、今入って来られた紳士がサンテミリ殿の事をロトルアと呼んでおられたが?」


「おお、サーライ殿。こちらの二人は夫婦で私が国王になる前からの馴染みでな。私室などの公的ではない場所では以前の名であるロトルアと呼んでもらっておるのだ」


「そうだったか。失礼した、疑問に思ったのでな。では、そちらに居られるのが名高きカインズ公爵家のヴァン殿か。そして、奥方のリーン殿にご子息のボトル殿とコルク殿だな。では挨拶を、初めてお目にかかる。私はラスティネ皇国皇帝のサーライだ。カリーナの兄でもある。よしなに」


 ええーっ! 皇帝陛下が来てるよ!? サーパさんからは何も聞いてなかったけど。父上や兄上は即座に目上の方に対する礼節で片膝をついた。母上、ミレーお姉様は淑女の礼節カーテシーで返礼する。


 僕が遅れて片膝をつく。すると、


「コルク殿、此度は我が妹カリーナと婚約したそうだが、他にも三人の婚約者が居られるとか。我が皇国では余り褒められたモノではないが、このラターシ王国では認められている制度。郷に入っては郷に従えとも言うし、カリーナが決めたこと故に野暮は言わないでおこう。それに、魔術道具も頂いたしな。更には我が国辺境の土地で栽培しているキノコを大量に定期的に購入していただけるとか。これからもコルク殿とは良い関係を築きたいと思う。義理とは言え兄になるのだし、仲良くして欲しい」


 そう言われて僕は声が震えない様に気をつけながら、返事をした。


「勿体無いお言葉です。本来であればこちらからご挨拶に伺わなければならない所を出遅れてしまい、申し訳ありません。ただ、僕は婚約者すべてを必ず幸せにするとここに誓いをたてます。どうか、こんな僕ではありますが、不出来な弟として仲良くして下さい。兄上」


 良し! 完璧だ。僕がそう思っていたらサーライ陛下から、


「コルク殿は本当に七才か? ヴァン殿、リーン殿?」


 と父上と母上に質問されてしまった。アレ? 間違えたかな?

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