第46話 キノコと危険なカオリ

 兵士五十名の魔術道具テクマクマハリタも無事に渡して、祖父おじい様と祖母おばあ様、父上、母上、兄上、ミレーお姉様、ミランダ様、ラターシャお姉さまにはペンダント、イヤリング、腕輪、指輪から好きな物を選んでもらった。


 それぞれ無色透明だった合成石には色を着けてある。やってみたら出来たので、つい楽しくなって張り切ってしまった。


 祖父おじい様はワインレッドの腕輪を。祖母おばあ様はロゼ色のペンダントを。

 父上と母上は琥珀色の石の大きさが少し違うお揃いの指輪を選んでいた。

 兄上はミレーお姉様と相談して、兄上が群青色の腕輪を、ミレーお姉様が山吹色の腕輪を選んだ。

 ミランダ様は悩んだ末に紫のイヤリングを選んでいたので、僕はミランダ様に紫の腕輪を渡して、陛下に献上して下さいとお願いした。

 ラターシャお姉さまは深草色の指輪を選んで、これでコルくんとの距離がまた近くなったとか呟いていた。まあ、聞こえないフリをしてあげたけど。


 そして、婚約者である三姉妹には指輪でそれぞれのイメージカラーを合成石に着けて渡した。

 マアヤは緑。マキヤは青。マラヤは桃。


 三人はとても喜んでくれた。そして、今からカリーナさんとサーパさんに渡して来ると言ったら三人とも付いてくるって言うんだ。

 僕は気にしないでサーパさんとカリーナさんの部屋に向かった。


 先ずはサーパさんの部屋に行く。するとイジイさんが居て二人で料理について話をしていた。どうやらラスティネ皇国の地方の郷土料理についてだったようで、イジイさんがサーパさんに質問していた。


 僕は二人に今ちょっとだけ良いかと聞いてから中に入った。三姉妹は既にカリーナさんの部屋に向かっていた。


「コル坊、どうしたんじゃ? うん、この魔術道具テクマクマハリタをサーパにも渡すのか? それは良いのう。実はラスティネ皇国にしかない食材の調達を頼んでおっての。地方にしか無いと今聞いたところなんじゃ。ソコにサーパが直接行って買ってくると言うからのう。コレがあれば安心じゃ」


「コルク殿、魔術道具テクマクマハリタって、何ですか? イジイ師匠が着けておられる腕輪がそうなんですか?」


 僕はサーパさんに説明した。すると、


「そんな素晴らしいモノは受け取れません。私は事情があったとは言え、貴方の命を脅かした身です。どうか、カリーナにだけ渡してやって下さい」


 生真面目なサーパさんがそう言ってきた。実害は何も無かったから、あの事はもう気にしないでって言っても首を横に振るサーパさんに困っていたら、イジイさんが助け舟を出してくれた。


「サーパよ、お主は少し生真面目すぎるぞい。コル坊に申し訳ないと思っておるようじゃが、地方の食材を調達して来たらコル坊が泣いて喜ぶぞい。そして、地方の食材を調達しに行くならこの魔術道具テクマクマハリタがあった方が良いぞい」


「師匠、でもたかがキノコですよ。あの地方に行けば無人販売でも売ってある、そんなキノコにコルク殿がそんなに喜ぶとは……」


「待って、イジイさんそのキノコってまさか……?」


「そのまさかじゃぞい。コル坊。どうやら、コッチでは人工栽培に成功しているようじゃ。マツタケ、マイタケ、ホンシメジ何でも来いの地方がラスティネ皇国にあるぞい」


 うおーっ!! それは、それは絶対に調達して貰わないと。僕は何も言わずにサーパさんの腕に腕輪を通した。そして、僕以外に外せない様に魔術をかける。 更にもう一つ腕輪を渡してサーパさんに言った。


「サーパさん、か・な・ら・ず! キノコを調達して来て下さいね。そして、コッチの腕輪を皇帝陛下に献上して下さい。僕からのキノコ人工栽培に対する感謝の気持ちです。詳細はイジイさんと良く詰めて、計画書を父上じゃなくて僕に出して下さい」


 それだけを言って、サーパさんの部屋を出る僕。後ろから、コルク殿? と不思議そうに言うサーパさんの声や、カッカッカッカッとイジイさんの笑い声が聞こえたけど、気にせずに扉を閉めた。


 そしてカリーナさんの部屋の前に行き、扉をノックしたら、顔を赤くしたカリーナさんが扉を開けてくれた。中に入ると三姉妹もニコニコして待っている。


 何だ? 何だかここで対応を間違えるとヤバイという危険なカオリがしている……

 僕は三姉妹を見てカリーナさんを見る。コレはアレだ。僕の出方次第で、この先に笑顔が溢れるか、阿修羅が顕現けんげんするかの瀬戸際のようだ。


 僕は懐から魔術道具テクマクマハリタを取り出してカリーナさんに渡した。


 果たして結果は……

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