第45話 魔術道具を作ろう

 昨晩はかなり遅くまで話し合いをしていた三姉妹とカリーナさん。どんな話になったのかは分からないけど、剣呑けんのんな雰囲気には成らずに済んだ様です。翌朝、眠そうにしながらも皆がニコニコと笑顔で起きてきたから。

 僕は話し合いの内容については聞かなかったけど、皆が仲良くしてるなら良いかと思ったんだ。


 それから、魔術学園に通うようになる一週間後まで、カリーナさんもラターシャお姉さまの指導を受ける事になった。


 ラスティネ皇国の行儀見習いって戦闘訓練で良いんだろうか。僕はそんな風に思ったけど、祖母おばあ様や母上、何よりカリーナさん本人が楽しそうなので余計な事を言うのは止めた。


 そして、サーパさんだけど何とイジイさんに弟子入りしてしまった。いや、貴方はカリーナさんの護衛で来たんですよね…… 

 何でもラスティネ皇国でもイジイさんの書いた本が伝説となっていて、そのイジイさんの書いた料理に対する興味が読んだ時以来、ずっと尽きずに今日まであったとか。


 イジイさんも別に嫌がってないし、料理人達や農夫の人達も受け入れた様なので、僕も認めるしかなかったんだ。


 そして僕は漢字魔術を駆使して魔術道具テクマクマハリタの制作を始めた。期間は一週間しかない。急ピッチで百〜百五十個は制作しないといけないから、素材集めをどうするか曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様に相談したんだ。


『コルクよ、その制作しようとしてる魔術道具テクマクマハリタはどんな事が出来るんだ?』


 曾祖父ひいおじい様から質問が来たので、僕は書物に書かれていた事を伝えた。


「はい、曾祖父ひいおじい様。状態異常(毒、麻痺、混乱、即死)無効と、攻撃魔術防御、斬撃、打撃防御です。それなら少し品質を落として制作可能なんです。本当は、魔術や攻撃も無効にしたいんですけど……」


 アレ、曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様が呆れた様に僕を見ているよ。何かおかしな事を言ったかな?


『コルク、良く聞きなさい。貴方が今言った効果を付与するなら、貴神光石かみのなみだが必要になるの。そんな貴石きせきはどこを探しても無いわよ』


 曾祖母ひいおばあ様が呆れながら僕にそう言う。アレ、【魔術大全の書】にはミスリとガーダン鉱石の合成石で良いって書いてますけど…… 


 僕がそう言ったら曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様がそのページを訳して読んでみなさいと言うから、読んでみた。



※ここに書く魔術道具テクマクマハリタは大切な人にプレゼントしたら喜ばれるだろう。


ミスリとガーダン鉱石を1:5で合成する。

合成石を好きな形に加工する。

状態異常無効魔術を込める。

攻撃魔術防御を込める。

斬撃、打撃防御を込める。


【込める順番を間違えると石が割れるので注意する事】


指輪、腕輪、ペンダント、イヤリング等にして渡すと好感度が(爆)上がりする事を保証しよう。

それでは、君の健闘を祈る!!



 後半は訳す必要はなかったけど、正直に訳して読んだ。隠し事は良くないしね。


 訳文を聞いた曾祖母ひいおばあ様にはジト目で見られたけど、曾祖父ひいおじい様は目を丸くしていた。


『加工を先にしてから、魔術を込めたら割れなかったのか! それと順番が大事なんなだな! コレは凄い事を教えてもらったな』  


『素材だけど、地下室のワインセラー奥にミスリやらの鉱石保管庫があるわ。マルコに言って必要なだけ取りなさい』


 やった。コレで祖父おじい様に言えば素材が揃うや。僕は仕事から帰ってきた祖父おじい様に皆が安心して暮らせる様に魔術道具テクマクマハリタを作りたいから素材を下さいとお願いした。祖父おじい様は快く了承してくれた。

 

 ソコで僕は指輪用の小さいミスリと小さいガーダン鉱石。腕輪用の少し大きいミスリと少し大きいガーダン鉱石。ペンダント用のミスリとガーダン鉱石を部屋に持って来た。


 先ずは我が家で働いてくれてる人達用の腕輪を作成する。腕輪本体は純粋なミスリで作った。手首にはめると自動でその人に合う様にした。

 ソコに魔術を込めた合成石をはめ込むと完成だ。翌朝、執事長に言って皆を集めてもらった。

 メイドさん十二名。庭師二名。農夫さん八名。料理人七名。執事長、執事合わせて三名。イジイさん。


 皆に腕輪を渡して常に着けておいてねとお願いした。執事長からは質問されたけど、我が家で働く人の腕章代りだと説明した。効果を言うと皆が遠慮して受け取らないからね。

 それから、兵士五十名の分は明日渡すと言って皆に仕事に戻ってもらった。


 自分の身内の分を先に作らなかった理由?


 練習って大事だよね…… 

 

 ごめんね、皆。僕はメイドさん達や明日渡す予定の兵士さん達に心の中で謝った。

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