第44話 カリーナ対マキヤ

 マキヤが漢字魔術じゃない、この国の魔術で身体能力強化をする。ラターシャお姉さまに学んだ魔術だ。

 一方、それを見ていたカリーナさんは魔力操作を行わない。カリーナさんの【ソコ】が僕自身も見えてないけど、ひょっとしたらまだ体術のみでイケるって事かな?

 もしそうならマアヤと互角。兄上よりは強い事になる。

 ラスティネ皇国って、皇族でもそんなに訓練するのかな?

 僕は不思議に思ったけど、マラヤと一緒に戦いを見守っていた。

 

 仕掛けたのはマキヤ。病み上がりから回復して女性らしい曲線が出てきたマキヤ。いや、ヤラシイ意味じゃないですからね。日本だとセクハラだって言われるのは重々承知してます。

 が、ここは異世界だし、僕は柔らかい曲線を描く女性が大好きたから、しょうがないよね。ねっ!


 まあ、それはさておき。マキヤは棒の真ん中辺りを持ったまま振りかぶり、カリーナさんの手前で振り下ろす。その時に両手を滑らせて、リーチを長くしていた。

 カリーナさんは慌てずにそれを木剣で受け流して下へ。そのままマキヤの懐に入り込んで、木剣を横殴りに振った。

 しかし、マキヤも棒を既に手元に引き寄せて振られた木剣をしっかりと受け止めた。

 受けられた木剣をそのままに蹴りをマキヤに繰り出すカリーナさん。

 スカートなのに上段に蹴りなんて、目のヤリどころに困りますよ、カリーナさん。ほら、マラヤが僕の目線をチェックしてます。


 マキヤは蹴りを後ろに飛んでかわした。そして棒をカリーナさんのバルンバルンな胸に向けて突き出す。カリーナさんは半身になって突きをかわして逆に木剣を突き出した。

 それを棒ではたき落として、反動を利用してカリーナさんに棒を振るマキヤ。


 ここまで互角に見えていたけど、僕の目はカリーナさんが優位に見えている。何故なら徐々にカリーナさんが身体能力強化を、それも部位強化を利用して攻撃の威力、速度を上げてきたからだ。

 マキヤもそれが分かっているのだろう。大きく飛び下がり、距離を取って普通魔術の強化を止めて、漢字魔術の強化、腕力強化じょうわんにとうきん脚力強化だいたいこつ体力強化まらそんを遂に使用した。


 飛躍的に上がる身体能力。ラターシャお姉さまの指導のたまもので、皆が全ての初歩、初級魔術を覚えた。

 

 マキヤの能力が飛躍的に上がったのが分かったのか、カリーナさんも慌てて部位強化を全体強化に変えたようだ。カリーナさんの魔力の流れが変わったのでそれが分かった。


 けれども、時すでに遅しでマキヤがカリーナさんの目の前に一瞬で飛び込み、喉元一ミリで突き出した棒をピタリと止めた。


 そこでラターシャお姉さまの声が、


「そこまで! 勝者、マキヤ!」


 とマキヤの勝ちを宣言した。カリーナさんは泣きそうな顔をしながらも、清々しく


「参りましたわ。最初からあの強化を使われていたら手も足も出なかったです」


 と言い、木剣から手を放して負けを認めた。


 そこで、勝ったマキヤが言う。


「純粋な体術でなら私はカリーナには勝てなかった…… 私ももっと訓練しますわ」


 そう言って棒を下げ、カリーナさんを見ながら五歩下がってから、僕の方を向いてやって来た。


「コルク、勝ちました」


「うん、凄かったよ。マキヤ。状況を良く見て的確な判断が出来てたね」


 僕がマキヤをそう褒めていたらマアヤがやって来る。そして、


「で、コルクの気持ちはどうなの?」


 そう聞かれた。さすが、三姉妹の長女だ。僕の目線などから冷静に判断したのだろう。けれども僕の返事は変わらない。


「マアヤ、僕は三人が納得しないなら婚約者を増やしたりしないよ。それはハッキリ言ったよね」


「つまり、私達が納得したなら婚約者が増えるのね…… コルク、今夜はカリーナと私達で少しお話したいわ。良いかしら?」


「? もちろん、良いけど。あっ、ケンカは無しだよ」


 僕がそう言うとマアヤが笑いながら、


「ケンカなんてしないわ。少しだけお話したいだけよ」


 と言ったので、僕はカリーナさんの元に三姉妹と一緒に行って、マアヤの提案を告げた。


「私も皆と話をしたいです」


 カリーナさんからそう返事があったので、四人部屋を用意する様にメイドさんに言っておいた。

 うん、どんな話し合いをするんだろう? 気にはなるけど、女子会を邪魔しちゃダメだよね。


 けれど、これで取り敢えずは落ち着いたから、イジイさん指導の元、料理人達が張り切って作った素晴らしい料理が用意されて、歓迎の宴がやっと始まった。

 サーパさんは宴の間、始終ニコニコしていた事は告げておこう。

  

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