第43話 マラヤ対カリーナ

「二人とも、用意は良いな! 始め!」


 ラターシャお姉さまの始めの声と同時にマラヤに向かって駆け出すカリーナさん。対するマラヤは棒を胸前に構えて待ちの体制だ。 

 カリーナさんは上段から振ると見せかけて、腰だめに持っていった木剣を横振りした。

 マラヤは落ち着いて手と手の間で木剣を受け、上に跳ね上げる。

 跳ね上げられた木剣を力で制御したカリーナさんは今度こそ上から振り下ろす。

 マラヤは受けずにカリーナさんの横に回り込みかわして、横から突きを入れる。

 身をよじってその突きをかわしたカリーナさんは大きく飛び下がりマラヤから距離を取った。


「中々やりますわね。私の攻撃を受けて跳ね上げれるとは思いませんでした」


 対するマラヤは無言でカリーナさんの胸をにらんでいる。うん、マラヤ。睨んでも小さくはならないからね。

 

 僕もカリーナさんが動く度にバルンバルンになるお胸が気になって、危うく攻防を見逃しそうになったよ。いや、それは僕が悪いんだけどね。カリーナさんのお胸に罪は無い。ないったら無い。


 カリーナさんは純粋な体術のみで戦ってるけど、マラヤは少しズルをしている。薄く細く、他の人にバレないように魔力を身体に行き渡らせ、身体能力を少しだけ強化しているんだ。格段に魔力操作と制御が上手になったから、誰にもバレないと思ったんだろうけど、僕には見えてるからね、マラヤ。


 まあ、それでも結果は同じだろうから何も言わないでおくけど。


 そして五分後。僕の予想通りの結果が目の前で繰り広げられた。激しく攻め立てるカリーナさんの攻撃を何とかかわし、はじき、捌いていたけど、遂に捌ききれなくなったマラヤ。そして、


「それまで! カリーナの勝ち!」


 ラターシャお姉さまの声が響いた。目の前には首元に木剣を当てられたマラヤの姿がある。マラヤは悔しそうに棒から手を放して、


「参りました……」


 とカリーナさんに言った。そして、僕の方に来て抱きついて泣き出した。


「ゴルぐーん! 負げちゃっだー! ウワーン」


 僕はマラヤの頭をヨシヨシと撫でて、マラヤに声をかけた。


「うんうん、負けちゃったね。でも良く頑張ったよ、マラヤ。少しズルしてたけど、それは大目に見てあげるよ。マラヤが負けたのはカリーナさんの胸に嫉妬しっとしたからだよ。マラヤは今のままで可愛いんだから、嫉妬しっとなんかしなくて良かったんだよ」


「だ、だっで、ゴルぐんがカリーナの胸ばかり見てたんだもん…… ウワーン」


 グハッ、バ、バレてた…… いや、まだ大丈夫だ。


「そんな事は無いよ。僕はマラヤの可愛い顔をずっと見てたよ。ホントだよ」 


 僕が優しくそう言うと少し顔を赤くしてエヘヘと含羞はにかむマラヤ。

 うんうん、やっぱり女の子は笑顔でいて欲しいからね。【例え】僕がカリーナさんのお胸に目が釘付けだったとしても、それは言わなくても良い事だ。本当に、【例え】だからね。あっ、先にバレてるって思ったのは内緒だよ……


 僕とマラヤを見て悔しそうに、うらやましそうにしているカリーナさんに今度はマキヤが声を掛けた。


「少し休憩をいれますか? それとも続けて私と対戦しますか?」

 

 マキヤの言葉にハッとするカリーナさん。そう、まだ三姉妹の一人をくだしただけだと気がついたのだろう。そしてマキヤに向かって、


「勿論、続けますわ。さほど疲れておりませんから」


 そう言って木剣を構えた。マキヤはそれを見て、マラヤが落とした棒を拾い構える。それを見たラターシャお姉さまがルール変更を告げた。


「双方ともに今回からは身体能力強化の使用を認める。それでは、用意は良いな? 始め!」


 あっ、やっぱりラターシャお姉さまも気づいてたのね。そりゃそうか。


 そうして、マキヤ対カリーナ戦が始まった。


 


  

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