第42話 カリーナの野望

 カリーナさんがウチにやって来た。アレ?カリーナさんってサーパさんの妹だよね?


 僕の【はてな】顔に気がついただろうサーパさんが、種明かしをしてくれた。


「コルク殿、だました訳ではないんだ。私とカリーナは確かに兄妹きょうだいだ。皇帝陛下とは母が違うから異母弟妹いぼきょうだいになるのだ。詳しい事は後で話そう」


 何とサーパさんも皇帝の弟だった…… うん、確かに聞いてなかっただけだから、だまされた訳じゃないね。でも闇ギルドって言ってたし、その辺はどうなのかな? 後で要確認だね。


 僕は何故かカリーナさんをにらんでいる三姉妹にやっと気がついて、手で制して挨拶をした。


「カリーナ様、お久しぶりです。あの時にお助け出来て良かったです。またこうしてお元気なお姿を拝見出来て光栄です」


 良し、完璧だ。と思ったらクレームが来た。


「コルク様、もっとくだけてお話下さい。私は皇帝の妹としてではなく、カインズ公爵家の皆様に行儀見習いで教えをたまわる立場ですから」


 そして、サーパさんも、


「そうです。皆さんもどうかココではカリーナをラスティネ皇国皇帝の妹だという事を忘れて下さい。どうか、厳しくご指導いただけたらと思います」


 と続けて言った。そこで祖母おばあ様が言う。


「分かったわ。それではカリーナは行儀見習いとして、サーパはその護衛として、我が家ではその認識で接する事にします。皆もそのように」


 その鶴の一声で二人に対する接し方が決まった。そして、カリーナさんが言う。


「有難うございます。それでお願いします。それで、そちらのお三方は何故私をにらんでいらっしゃるのか教えていただけますか?」


 いきなりぶっ込んで来たよ。カリーナさん、そう言うのはもう少し落ち着いてからにして欲しかったです。マアヤが代表して返事をする。


「カリーナさん、一瞥いちべつ以来ですね。私達は三姉妹で皆がコルクの婚約者です。私達から見るとカリーナさんのコルクへの言葉が少しかんさわりましたので」


「あら、それは申し訳ありません。けれども私も危ない所をコルク様に助けていただいて、それ以来コルク様をお慕いしていますのでつい…… ご不快に思われたなら謝りますわ」


 と悪いとは思ってない口調でそう言うカリーナさん。誰か助けて下さい。僕が周りを見回すと、ニコニコした母上と目が合った。そうだ、こんな時こそ母上だ。僕は母上に目でうったえる。

 それに気づいた母上。そして、


「あらあら、コルくんってモテるのねえ。母としては複雑だけど、嬉しいわ。それじゃあカリーナちゃんもコルくんの婚約者になるのかしら?」


 母上…… 火に油を注げとは僕の目は言ってなかった筈です。母上の言葉を聞いたカリーナさんは、


「まあ、お義母「かあ」様、お許し下さいますか!?」


 そう嬉しそうに言い、三姉妹は、


「「「お義母かあ様!! そんな!」」」


 と抗議の声を上げた。そこで母上が言葉を続けた。


「あらあら、困ったわねえ。カリーナちゃん、ウチの家訓で欲しいモノは戦って手に入れろってあるんだけど、カリーナちゃんも戦って手に入れる?」


 その母上の言葉に闘志を目に宿すカリーナさんと三姉妹。

 は・は・う・えー!! そんな家訓は知りませんけど。ほら、祖母おばあ様も呆れた様に首を横に振ってるじゃないですか。祖父おじい様、父上、兄上まで、笑いながら見てないで何とか言って下さいよ。

 僕が何も言えずにアワアワしていたら話は勝手に進んでいた。


「それでは、お三方と戦ってコルク様の婚約者の地位を手に入れて見せますわ」


「望むところよ、カリーナさん。先ずは末っ子のマラヤがお相手するわ。お互いに体術のみで決着をつけましょう。ルールは互いに致命傷になるような攻撃はしない事で良いかしら?」


「マアヤさん、勿論ですわ。私もラスティネ皇国皇帝の妹としてそれなりに模擬戦の経験もありますから。コルク様に助けていただいた時は不覚をとって、身体能力低下、魔力枯渇の腕輪を付けられていたので、反抗できませんでしたの」


 僕が強くなった三姉妹とカリーナさんでは勝負にならないと思って止めようとしたらカリーナさんが僕を見てそう言った。

 ああ、そう言えば変な魔力を感じたからあの時に腕輪をとってあげたっけ。要らないって言うからその場に置いてきたけど、ハラードがまた悪用しそうだな。今度見つけたら壊しておこう。


 じゃない、勝負を止めないと…… 


 はい、無理でした。ラターシャお姉さまとイジイさんも見物に来ております。ラターシャお姉さまが審判をしてくれるそうです。大怪我はさせないと保証して下さいました。僕は既に諦めの境地にいます。ウチの庭で木剣を構えたカリーナさんと、百三十センチの棒を構えたマラヤが目の前にいます。


 そして、ラターシャお姉さまが合図した。


「二人とも、用意は良いな! 始め!」



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