第41話 閑話 イジイさんと前世のお話

 それはカリーナさんが来る少し前。畑や田んぼを作る計画をイジイさんと決めていた時の事。

 そう言えばイジイさんと前世の話をした事がないなと思い、聞いてみた。


「うん? 前世の話じゃと。そうじゃのう。わしは平成三年に八十八で亡くなったんじゃが、四国の片田舎で兼業農家をしておったんじゃ。子供は四人で孫は十人おったんじゃ。ひ孫もおってなあ。死んだ時は長男夫婦と孫夫婦にひ孫に看取られて亡くなったんじゃ。」


 以下はイジイさんの話


 ……明治三十六年に産まれたわしは八人兄弟の末っ子でな。母親は産後の肥立ちが悪くわしが1才になる前に亡くなったそうじゃ。これは父親の後妻さんが教えてくれた。後妻さんはわしを本当の子供の様に可愛がってくれてのう。わしも五才までは本当の母親じゃと思っておった程じゃよ。

 後妻さんは子供が出来ない体でなあ。それもあって、まだ小さかったわしとすぐ上の姉は『母ちゃん』と呼んで慕っておった。まあ、他の兄、姉も嫌ってはおらんかったがの。


 そんなわしも高等小学校を経て仕事についたんじゃ。地主さんの畑を任されて耕しておったんじゃがの。そして、そこで一緒に働いておった女子おなごはらませてしまってのう。そのまま結婚したんじゃ。それがわしが十八で妻が十六じゃったかな。カッカッカッカッ、我慢出来んかったのう。妻は可愛らしい女子おなごでの。わしは生まれ変わったが今でも妻が好きじゃから、コッチでは結婚はせんかったわい。どうじゃ? 純愛じゃろうが。カッカッカッカッ。


 

 そんな感じで軽く話をしてくれたイジイさん。死んだ後に気がつくと綺麗な空間にいて、ココが天国かと思っていたら、この世界の女神様が現れて転生しないかと誘われたそうだ。面白そうだと思ったイジイさんは、名前をカクテルのエックス・ワイ・ジーをモジって付けてもらい、転生したそうだ。

 種族は人ではなく、草原ドワーフ。だが、特異個体として、寿命が長いらしい。


 そんなイジイさんから逆に僕の事を聞かれた。僕はイジイさんと同じく四国で生まれ育った事。就職は高校卒業後に大阪でして、料理人をしていた事などを話した。でも自分が何で死んだかは分かるが、転生した理由は分からない事を話した。

 僕は1才の時に前世の記憶が甦ったけど、女神様に会った記憶は無い事もイジイさんに話した。


「ふーむ、てっきりコル坊もお会いしてるかと思ったんじゃがのう……」


 イジイさんはそう言って少し考えていたけど、


「まあ、それでも今が充実しておるなら良いんじゃないかのう。わしも出会えて嬉しいしなぁ。女神様からは他にも渡り人がおる事は聞いておったから、会いたいなぁと思っておったしのう」


「僕もイジイさんに出会えて良かったです。それも同じ四国出身だったなんて、なおさら嬉しいです」


 それから僕達二人は石鎚山や讃岐うどんの名店の話で盛り上がり、遅くまで語り合った。 


 そして、畑や田んぼを作る計画書を作るのを忘れていた事に翌朝になって気がついたのだった……

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