第40話 再会のカリーナ

 イジイ塾に僕を含めて料理長達七人と更にメイドさんが三名。新たに雇った農作業をしてもらう人が八名。何やかやで大所帯になっていた。総勢十九名いるが、勿論料理人達は料理にたずさわり、メイドさんも一人が料理に。二人は畑で野菜栽培にたずさわる。農作業組の八名の内、五名は経験豊富なベテラン勢で、三人は若手(一番下は十五才)でこれから覚えていって貰う。

 八名は父上の募集で面接に来た三十五名の中から、イジイさんが選んだ人達だ。

 ベテランさん達も互いに知らない事は知っている人が教え、素直にそれを聞ける人ばかりだ。


 そして、この国にはあまり流通していない米が遂に我が家で栽培される。水田にする為にイジイさんに教わりながら僕が土魔術を駆使して田んぼを作った。広さは一反いったん(三百坪さんびゃくつぼ)が五つにした。あっさりと五反ごたんの広さで良いんじゃないかと思ったら、前世の様に農機具がないから、人力でやるなら一つ一反ぐらいがちょうど良いとイジイさんに教えられた。

 指導して貰いながら、あぜも作り水路も引いて水を入れれる様にした。そのまま並びで畑も広さ一反で二つ作った。何故並べたのか聞いたら、米ばかりを同じ田んぼで作り続けると土の栄養分が減り、美味しい米が出来なくなるからだそうだ。

 うーん、勉強になるなぁ。そして、今回は三つは米、二つは麦、畑は一つだけ使用して一畝ひとうねに一種類の野菜を植えて、あぜには少量の虫が嫌うハーブを植えた。

 このハーブは増え過ぎてもダメらしく、増えてきたら抜いて乾燥させるそうだ。

 それを火にべて燃やすと虫が来ないし、燃やした灰を水田にまいておけば、病害が少なくなるそうだ。

 そうして、我が家に僕が密かに発動した和食を食べよう計画は着実に進行していった。


 そんな日常が五日続いた日の晩御飯の時に、父上からいよいよ明日、ラスティネ皇国から妹御いもうとごが来ると教えてもらった。

 国同士の事なので先ずは陛下に挨拶をして、それを終えたら父上がエスコートしてウチに連れて来るそうだ。

 

「だからコルク、明日は料理も畑仕事も止めておけよ」


 そう父上に釘を刺され、渋々と僕は頷いた。


「ボトルやマアヤ達も明日はラターシャ殿の訓練は無しだからな」


 兄上達も不満そうながら頷いている。マアヤ、マキヤ、マラヤは最近になって実力がかなり付いてきて、魔物や魔獣相手に実戦訓練を積んでいた。


 マアヤに至っては兄上を模擬戦で圧倒して、五本に一本しか勝ちを得られないと兄上がこぼしていた程だ。

 マキヤは病み上がりから元気だったけど最近は少し身体も柔らかい曲線が出てきて魅力がアップしている。

 マラヤは一つ年上だけど、本当に可愛く甘えて僕をたててくれる。アレ? 実力が上がった話じゃなくて惚気のろけになってしまった……


 まあ、そんな感じで皆が強くなってるところだ。



 そして、翌日の午後に遂に我が家に行儀見習いとしてラスティネ皇国皇帝の妹御いもうとごがやって来た。

 父上がエスコートして馬車から降りてきた女の子を見て僕は仰天して言った。


「カ、カリーナさん!?」


 僕の声でコチラを見たカリーナさんは優しく微笑みながら言う。


「またお会い出来て嬉しいです。コルク様。あのせつろくにお礼も言えずに去ってしまってゴメンなさい。これからよろしくお願いします」


 そう言って見事なカーテシーを決めたカリーナさんを三姉妹が睨んでいた…… 


 カリーナさん、十二才ぐらいだと思ってたけど、十才だったのね。お胸の成長がいちじるしいからつい勘違いしちゃった。

 とバカな事を考えていた僕は三姉妹の目付きには気がついてなかったのだった。

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