第37話 大陸からの使者が来た

 それは……


 隣の大陸にある大国、ラスティネ皇国から使者がやって来て、皇帝の異母妹をこの国の学園に留学させたいとの事で、その際に住む場所を行儀見習いを兼ねてウチ(カインズ公爵家)に頼みたいと申し出てきたらしい。

 皇帝の異母妹は十才で、まだ婚約者もおらずどこに嫁に行っても恥ずかしくない様に、色々な国に留学させてその国の事を勉強させる方針だと言う。

 父上と祖父おじい様が陛下に呼ばれたのは、使者がカインズ公爵家の方にもお知らせしたいと、陛下に申し出たからだそうだ。

 使者さんは二日間この国に滞在するそうで、帰国日に返事をして欲しいと言ってたらしい。


 陛下は別に害はないだろうと了承する気のようだが、父上と祖父おじい様は家族と相談すると言って陛下の了承を待ってもらったそうだ。


 ソコで先ずは祖母おばあ様。


「皇国の皇帝の異母妹が単身でウチに来る事はないでしょうね。家臣やメイドを合わせて何人になるか確認しないと迂闊うかつな返事は出来ないわ」


 そして母上。


「あら〜、女の子なら良いわよ〜。ヴァン。娘が増えるわ〜」


 兄上。


「別に良いと思います。父上の決定に従います。ただ、僕はミレー以外と婚約するつもりがないので、もし婚約者にってなったらコルクにお願いします」


 いや、兄上。ちょっと待って。僕も三姉妹以外と婚約するつもりは無いですから。ほら、兄上が変な事を言うから、マアヤとマキヤは不安そうな顔をするし、マラヤなんか兄上をにらんじゃってますよ。マラヤ、いくら可愛い顔でもそんなににらんだらダメだからね。


 そこで母上から追撃が来た。


「そうね。ボトくんは一途だから、もしそんな話になったらコルくんの出番ね」


 は・は・う・えー。貴女はご自分の息子を誤解してます。僕も一途ですよ。しかし、僕の心の抗議は誰にも届かずに、父上が決定されたようだ。


「良し、それじゃあ基本は受け入れると言う事で。母上が言った人数は確認して、多いようなら減らして貰う事を条件にします。何人ぐらいなら良いですかね? 母上」


「そうね。本人も含めて五人と言うところかしら。あちらの立場もあるでしょうから三人(本人、お付き二人)では多分ダメでしょう」


「分かりました。それで使者には返事をします。良し、それじゃあコルクしっかり頼んだぞ」


「えっと父上? しっかりって何をですか? 僕は学園に通ってませんし……」


 父上の言葉に困惑して返事をしたら、ニヤッと笑った父上が言った。


「上手く仲良くなって、波風が立たない様にしてくれって事だよ。それに、お前の魔術もなるべく見せるなよ。あ、あと陛下からの言伝ことづてで、もし受け入れるなら、ボトルとミレー殿下も学園に通うように言われている。それは良いな、ボトル」


「はい、父上。分かりました。学園内ではちゃんと僕が護衛します」


「うん、さすがボトルだ。俺や陛下の言いたい事をちゃんと分かってくれたな。ミレー殿下には友人になって貰いたいと陛下は仰っていたが、それは本人達次第たからな」


 そう言うと父上は陛下に返事をしてくると言ってまた王宮に向かった。何も言わなかった祖父おじい様が僕を手招きするので行ってみると、


「コルク、ラスティネ皇国が何か思惑があってこの国に異母とはいえ妹を留学させる可能性もある。コルクにはお付きで来ている者達をしっかり見ていて欲しいのだ。キャラやリーンはそう言う事は得意じゃないからな。七才とは言え、お前が一番頼りになるからよろしく頼む」


 祖父おじい様、僕のやる気は祖父おじい様の言葉でみなぎりました。お任せ下さい。

 僕は祖父おじい様に分かりましたと返事をして、婚約者の元に向かった。さあ、今から色々とお話をしないと…… 

 

 それから、三人と話をして、もし、もしだけど婚約者にって話になったとしても、三人が受け入れない限り必ず断ると約束した。それで三人も納得してくれたので、僕もホッとしたけどよくよく考えて見れば、兄上とってなるかも知れないし、学園に通う別の子になるかも知れないし、そんな気にならないぐらい勉強に打ち込むかも知れないから、杞憂きゆうだよとも三人には言った。




 しかしコルクは知らなかった。まさにコルクを狙ってやって来る事を……  


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