第36話 皆がトロロに参りました

 カインズ公爵家では大騒ぎになった。何せガイアウルフが十頭以上現れて更に変な小屋まで出現したからだ。そんな中、家にいた父上が武装して家の兵士を連れて現れた。それを見て威嚇いかくするガイアウルフ達。

 ソコで慌てて小屋から出る僕達。


「ボトル、コルク、皆無事か!?」


 父上がそう言ってきたから慌てて僕は父上に説明した。


「父上、武装解除してください。このガイアウルフ達はテイムされていて、人を襲ったりは絶対にしませんから」


 僕の言葉に父上はビックリした顔をしたが、直ぐに信じてくれて、兵士を下がらせて自身の武装を解除してくれた。

 そしてゆっくりと歩いてコチラに来る父上。武装を解いた父上を危険と見なさなくなったガイアウルフ達はむしろ尻尾を大きく振って父上を出迎えた。それを見て微笑む父上。


「敵になると厄介なガイアウルフが、こうして歓迎してくれると可愛いものだな」


 そう言って一番近くにいたウルフにアゴの下から手を少し伸ばす。伸ばされた手を少し匂い、その手を舐めるウルフ。舐めたのを確認してから父上はアゴ下に手を伸ばして撫で回し始めた。

 さては父上は犬好きだな。コレはこちらに取っては好材料だ。


 そして、一頻ひとしきり撫で回して満足した父上は、エクスワ・イジイさんを見て言った。


其方そなたがテイムしているのか? それで、森にこんなにガイアウルフを連れてきた理由は何だ?」


 領主らしく厳しく問い質す父上。そして、イジイさんは僕達にした説明を繰り返して、森にいる許可を父上に求めた。

 考え込む父上を見てラターシャお姉さまが近づいて、耳元で何かを言った。その言葉にビックリする父上。


「な、何とまだ生きていたのか? 本当に……」


 何やらブツブツ言う父上。僕はイジイさんに耳打ちして、トロロを用意して貰った。そして、それを父上に持って行く。


「こ、これが百年芋!」


 それから父上はトロロを食べてフーッと満足気に大きく息を吐いた。そして、


「森では領民が不安を覚える。ソコでだ。イジイ殿。ここに居を構える事を許そう。ガイアウルフもこの庭で好きに過ごして構わない。但し、トイレを用意する故にソコで用を足す様に教えてやってくれ。そして、転移陣を創る故に森にはソレを利用して行って貰いたい。その時には五頭以下でお願いしたい。出来れば貴方の知識を我が家の料理人に教えてやってくれると有り難いのだが、無理にとは言わぬ。ソレにガイアウルフが庭に居てくれるなら、護衛料をちゃんと支払う事もここに約束しよう」


 一息にそう言ってイジイさんを見る父上。イジイさんの返事は、


「おお、有難うございます。大変助かります。勿論、この子達(ガイアウルフ)にはちゃんと言い聞かせます故に、ご安心下さい。それに、わしの知る料理の知識で宜しければ、幾らでもお教えしましょうぞ」


 だった。思わずガッツポーズが出ちゃったよ。それから、環境を整えるまでは一緒に転位させた小屋に住んで貰う事になった。イジイさんはこの小屋のままで良いと言ってたけれど、父上がどうしてもと押し切った。

 そして、ガイアウルフ問題を解決した僕達に一人あたり金貨五枚の報酬が出た。その日の晩御飯の時に、祖父おじい様、祖母おばあ様と母上、ミランダ様にもイジイさんが紹介されて、トロロを食べて皆が至福の顔をしていた。そして、ラターシャお姉さまからイジイさんに質問が飛んだ。


「イジイ様。どうやって百年芋を見つけておられるのですか? 葉が出ている間に印でも入れておられるのですか?」


「カッカッカッカッ、様は止めて下され。ラターシャ殿。実はガイアウルフに探して貰っておるのじゃ。彼奴きゃつらは鼻も効くし、穴掘りも上手くてな。初めはダメ元であったが、見事に掘ってきてくれたのでな。一年中、何処かで大きくなっておる芋を探すには彼奴きゃつらが居なければとても無理だぞい」


 その返事を聞いて祖母おばあ様や母上、ミランダ様が、撫でても怒らないかなどをイジイさんに聞いていた。


 イジイさんがウチ(の家の庭)に住むようになった翌日。朝早くから陛下に呼ばれて出掛けた父上と祖父おじい様が、いぶかしげな顔でお昼に戻ってきた。そして、居間に僕達も集められたのだが、父上の口からトンデモない話を聞かされた。

 それは……


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