第35話 お爺さんの話

 それからが大変だった。興奮したお爺さんに僕が渡り人だと知った兄上やミレーお姉様、マアヤ、マキヤ、マラヤの質問攻め。そう言えば、皆には言ってなかったから、こうなるよね。


「全く、僕にまで内緒にする事はないじゃないか」


 と兄上。


「そうだぞ、水臭いぞ。コルク」


 とミレーお姉様。


「コルク、もう隠し事は無しにしてね」


 とマアヤ。


「コルク、だからあの謎の文字をスラスラ読めたのね。でもそのお陰で私は貴方と出会えたんだし」


 とマキヤ。


「コルくん、他にはない? 例えばオンナとか?」


 とマラヤ。いや、マラヤは僕をどう思ってるのかな? 前世では女性にモテたりしてなかったよ。そして、


「なんじゃ、なんじゃ? このベッピンさん達は坊主相手に何を言ってるんじゃ? まるで彼女みたいじゃな?」


 お爺さんが不思議そうに言うから、僕は説明した。


「お爺さん、僕は先程お爺さんに事情を説明したボトルの弟でコルクって言います。カインズ公爵家の次男です。コチラの三人は僕の婚約者になります」


「何ジャとー! こんなチンマイのに三人も婚約者がおるのか!? それは凄いのう。しかし、コルクよ。公爵家の次男とは思い切って女神様に色々と無理を言ったのじゃな」


 アレ? 僕は転生した自覚はあるけど女神様になんか会ってないよ。だから正直にお爺さんにそう言ったんだ。


「何と、お会いしてないと? ふーむ、わしは女神様にお会いしてこの世界に転生したから、てっきりコルクもそうじゃと思ったのじゃが…… あっ、名乗ってなかったの。わしはエクスワ・イジイじゃ。よわい二百八十三才のじじいじゃが、よろしく頼むわい」


 そう言って僕達を小屋に招待してくれた。あの木の根を持って。


「さあさあ、ソコに座って待っててくれい。直ぐに出来るからの」


 僕はイジイさんが持っている見た目が木の根を何か知っているから楽しみにしてたけど、兄上や他の皆は不安そうに顔を見合わせている。だから僕は説明した。


「皆、安心してよ。アレは木の根じゃなくてお芋なんだ。とても栄養が豊富で体に良いんだよ」


 僕がそう言うとミレーお姉様が、


「私、お芋はお口の中の水分が無くなるから、あんまり好きじゃないんだよね」


 と言うので、このお芋は大丈夫だよと言っておいた。


 そしてイジイさんが麦飯を盛ったお椀を人数分、お盆に乗せて現れた。それを置いて直ぐにとって返してきて、今度はトロトロになった状態のお芋を持ってくる。


「さあ、この麦飯の上にコレをかけて、お好みでコレを上からかけて食べてみぃ。力がみなぎるぞぅ」


 しかし、皆は躊躇ちゅうちょしている。だから僕が一番に麦飯の上にトロロを掬ってかけて、イジイさんが言ったコレを前世でかけた様にかけてから、少しかき混ぜて麦飯と一緒にかき込んだ。

 そしたら、僕の体の中を森の息吹がかけ巡り回って、力が本当にみなぎったんだ。


 食べた僕を見て皆が真似して食べだす。そして、


「うわあ、コレは凄い!」

「今ならドラゴンでも倒せる!」

「お肌がこんなにツヤツヤに!」

「私こんなに力が溢れてるの初めて!」

「うーん、美味しいー!」


 皆の言葉にそうじゃろう、そうじゃろうと頷くイジイさん。イジイさんも同じ様に食べてから、


「ふおー、これでまた寿命が伸びたわい!」


 と大きな声で言った。ソコで僕はイジイさんに聞いてみた。


「どうしてこの森に来たんですか?」


「ああ、実はこの上の山に居ったのじゃが、最近になって人里恋しくなってしまってのう。それで、表の子達も締群してかなりの間、一緒にいたから離れるのも辛くてなぁ。ついつい連れて来てしまったんじゃ。しかし、ご領主様がダメだと言うならまた山に戻るぞい」


 僕はそれを聞いて言った。


「ダメです。これから兄上と僕も一緒にお話するので、表の子達も連れて父上の所に行きましょう!」


 そう、僕にはイジイさんを戻す訳にはいかない大切な理由があった。

 【醤油しょうゆ】と、【麦飯】である。コレらとせっかく出会えたのに、お別れなんて僕には出来ない。僕は父上がうんと言わないなら、コレを食べさせたら万事解決ばんじかいけつだと確信していた。

 ソコでイジイさんに先程のトロロをもう一つ用意してもらい、僕は外に出てラターシャお姉さまに呼びかけた。


「ラターシャお姉さま、大丈夫なのでコチラに来て頂けますか?」


 僕の言葉に姿を現すお姉さま。


「コルくん、あと五分待って小屋から出てこなかったら突入するつもりだったよ」


 そう言うラターシャお姉さまを小屋に連れて入って良いかイジイさんに確認する。構わないと言うので一緒に入って、そして、イジイさんが用意してくれたトロロを食べて貰った。


「こ、これは伝説の百年芋! ああ、この至福をまた味わえるなんて!」


 食べ終えたラターシャお姉さまにエクスワ・イジイさんを紹介したら、


「あの、間違ってたら失礼ですが、百年前に【食道楽・旅日記】を書かれたエクスワ・イジイさんですか?」


 とラターシャお姉さまが聞いたら、


「おう、嬢ちゃんは若々しいのに、古い本を良く知っておるのう」


 とイジイさんがビックリしていた。その返事を聞いてラターシャお姉さまが僕達に言う。


「皆、今すぐカインズ公爵家に話にいこう! 私が必ず説得して見せる!」


 と何故か僕より気合いが入っている。まあ良いかと思い、僕は表のガイアウルフ達もこの小屋も含めてカインズ公爵家の庭に転位した。

 もう逃げれませんからね。イジイ(醤油)さん。







今回は二千字を超えてしまいました。スミマセン。m(_ _)m



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