第30話 怒られました

 ラターシャお姉さまが落ち着いた様子で玄関に向かう。僕は取り敢えず手で制されたので、そのまま居間にいた。


 そして、ラターシャお姉さまが【やらかして】くれました…… 


「どうしたんだ、マルコ。そんなに慌てて? コルくんなら昨夜から私と一緒に居たよ。昨夜はウチに泊まって一緒に寝たんだが」


 ラターシャお姉さまの返事は当然僕にも聞こえていたし、泣いて取り乱していたマアヤ、マキヤ、マラヤにも勿論聞こえていた。だって、ピタッて泣き声がやんだもの。


 こ、これは不味い展開じゃないだろうか…… 僕がそう恐れていたら、祖父おじい様とラターシャお姉さまを押しのけて入ってきた三姉妹が怖い顔で僕をロックオンした。


「コルク、事情があるんでしょうけどちゃんと説明してくれるのよね?」(マアヤ)


「コルク、後ろのテーブルに座ってる女性は誰かしら?」(マキヤ)


「コルくん、もう浮気したの? まだ結婚してないけど、婚約はしたよね?」(マラヤ)


 三者三様の質問が僕に飛んでくる。僕は一つ一つ丁寧に返事をした。


「マアヤ、勿論だよ。先ずここでは簡潔かんけつに言うけど昨夜はラターシャ先生と魔術について話し合っていたんだ。それで夜も遅くなったから泊まらせてもらっただけなんだよ。


マキヤ、後ろの女性はカリーナさんと言って、以前ラターシャ先生がちょっとした事を手助けしたんだ。そのお礼を今朝、言いに来たんだよ。


マラヤ、ヤダなあ。浮気なんてしてないよ。僕を信じて欲しいなぁ」


 良し、完璧な返答だ。と僕が思った時に今度はカリーナさんが【やらかして】くれた……


「あの皆様、初めまして。私はカリーナと言います。昨夜は貞操ていそうの危機をコルク様に助けていただきました」


 そう正直に言って頭を下げたんだ。カリーナさんの言葉の後は、僕はマアヤ、マキヤに両側からつかまれてマラヤが前を歩いて公爵家まで強制連行された。祖父おじい様はラターシャお姉さまを強制連行していた。


 それから祖母おばあ様に母上、兄上、ミレーお姉様、何故かミランダ様も加わって二時間に渡って皆に説教されました。勿論、ラターシャお姉さまも僕の隣で正座させられてました。


 最後に母上が、締め括りとして言った言葉に僕は母上に抱きついて泣いてしまった。


「コルくん、凄い魔術が使えてもコルくんはまだ、七才。私にしたらボトくんもコルくんも大切な宝物だから、成人するまでは何も言わずに何処かへ勝手に出掛けたりしないでちょうだいね。昨夜は心配で寝れなかったわ」


 そう言って優しくギュッと抱きしめてくれた母上はまだ少し震えていて、そして目の下にくまが出来ていたんだ。僕はギュッとしがみついて、泣きながらゴメンナサイと何度も謝った。そして、母上だけじゃなく皆に、もう黙って出掛けたりしないからと頭を下げてお説教は終わった。

 ラターシャお姉さまも後から、


「コルくん、ゴメンね。私からマルコに連絡を入れておけば良かったね」


 と言ってくれたけど、僕が一言誰かにラターシャお姉さまの所に行ってきますと言っておけば良かった事なので、逆にお姉さまにゴメンナサイと頭を下げた。


 そして、祖父おじい様から呼ばれたので部屋に行ってみたら、祖父おじい様から質問された。


「さて、コルク。皆は見てないから気がついてないが、ボトルの模擬戦の時に陛下や私達を襲った魔法師が一緒だったのはどうしてかな?」


 流石に祖父おじい様だ。あのゴタゴタの中でしっかり気がついていたなんて。それなのに、場を更に混乱させないように後から聞いてくる思慮深さ。うん、ヤッパリ父上じゃなくて祖父おじい様を目標にしよう。


 それから僕は祖父おじい様に昨夜の出来事を包み隠さずに話をした。モリノミ公爵家の悪事だが、証拠は提出出来ないから陛下にも父上にも黙っておこうと祖父おじい様が仰ってくれたからホッとしたよ。

 それから僕はマアヤ、マキヤ、マラヤも一緒にラターシャお姉さまの離屋敷に向かった。


 扉を叩くとラターシャお姉さまが出て来たけど手に一枚の紙を持っていて僕に見せてくれた。そこにはあの魔法師が書いたのだろう文字が。


『世話になった。いつか必ずこの恩を返す』


 と書かれていた。そうか、出て行ったんだね。もう少しカリーナさんとお話したかったけど…… 僕がそう思っていたら、マラヤにお尻をつねられた。


「コルくんから浮気の匂いがした」


 って、何? 僕からそんな匂いが出てるの? これは不味い。前世の記憶で読んだラノベに有ったスキル【無臭】を手に入れたいと思ったのはココだけの話です。


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