第28話 魔法師の理由

 僕は……


 念の為に上級魔術を展開した。


魔力滅失ナイナイ


 僕の展開した魔術で魔法師が練り上げていた魔力が消える。


「な、なに! 何故魔力が消えた! クソッ、もう一度だっ!」


 再び魔力を練り上げようとする魔法師に向かって先に僕の魔術が襲いかかる。


上位束縛うしろでまたしばり


 魔法師を魔力のロープが縛り上げた。このロープは縛った相手から魔力を奪い、相手の魔力が無くなるまでは消滅しない優れものだ。読方ネーミングはともかくとしても……


 縛られた魔法師はジタバタしているけど、魔力を吸われているから魔法を打つことも出来ない。だから僕とラターシャお姉さまは魔法師に近づいて尋問を始めた。


「あの時に襲撃に失敗したから、もう国に逃げ帰ったかと思ったけど、どうしてまた襲ってきたの?」


 僕の質問に黙ったまま答えない魔法師。ラターシャお姉さまが違う質問をする。


「隣の大陸から来たという事だが、魔法と言う事は

ラスティネ皇国からか?」


 それにも黙ったままだ。仕方ないあまり使いたく無かったけど、


質疑応答ききますこたえます


 僕は神級魔術を唱えた。これは聞かれた事に答えずにはいられない気持ちになる魔術であらゆる秘密を探り出せる。但し、掛けられた相手の負担が大きく、一時間以上も掛け続けていると自我が崩壊してしまう。だから素早く聞きたい事を質問しなくちゃいけないんだ。僕は最初にした質問を繰り返して聞いた。


(魔法師以下魔) 「雇主やといぬしから、王家又はカインズ公爵家の誰かを、誰でも良いから殺せと言われたからだ」


(僕)「雇主やといぬしは誰?」


(魔)「モリノミ公爵家だ」


 そこでラターシャお姉さまがさっきと同じ質問をした。


(魔)「そうだ。ラスティネ皇国の闇ギルドから来た」


(ラ)「闇ギルドがまだ有ったとはな…… それではモリノミ公爵家から闇ギルドに依頼が有ったと言う事か?」


(魔)「初めはそうだ」


(僕)「初めはってどういう事かな? 今は違うの?」


(魔)「今は違う。モリノミ公爵は俺の妹をさらって何処かに幽閉ゆうへいしている。俺は妹の命を救う為にヤツの言う事を聞いている」


 僕とラターシャお姉さまは絶句した。まさかそんな事までするなんて……

 時間がまだあるから質問を続けた。


(僕)「その妹さんの幽閉場所は分からないの?」


(魔)「魔力感知や気配察知を駆使して探したが見つからなかった」


(僕)「もし妹さんを助けたら大人しく国に帰るかい?」


(魔)「妹が助かるなら俺はここで死んでも構わない」


(僕)「分かった。今から魔術を解くから暴れるのは無しにしてね」


(魔)「どうせ何をしても貴様には敵わないようだ。拘束を解かれても反抗しない事をルーン神に誓おう」


 そこでラターシャお姉さまが僕に教えてくれた。ルーン神とはラスティネ皇国の信仰する神様で、魔法師がルーン神に誓うと言ってそれを破ったら、魔法が使えなくなるそうだ。それを聞いて僕は魔法師に掛けていた魔術を解いた。


 既に魔力は限界に近いぐらいロープに吸われていたらしく、真っ青な顔をしているけど反抗する素振りはない。僕は魔法師の額に指先を当てて魔術を唱えた。


記憶見視のぞきみ


 魔法師の記憶から妹さんの顔を確認させて貰った。当たり前だけど僕より年上だ。十二〜三才ぐらいかな? まあ顔が分かれば良いから年齢は良いか。


「少しここで待っててくれるかな? 妹さんを連れて来るから」


「なっ! 場所も分からないのにどうやって!?」


「そこは秘密。けど大人しく待ってたら絶対に連れて来るよ」


「分かった…… 待とう」


 その返事を聞いてから僕は妹さんのいる場所まで転位した。あっ、名前を教えてもらっとけば良かったな。


 そして、ソコでは今まさに妹さんに襲いかかろうとしている中年の執事服を着た男が。


 僕は杖で男を叩いて気絶させた。妹さんを見ると服をビリビリに破かれていたけど決定的な事はまだされて無かったようだ。泣きじゃくっているけど僕はベッドから毛布を取って体を包んであげた。

 そして、声をかける。


「大丈夫? 助けに来ました。今からお兄さんの所に連れて行きますから僕を信じて手を握ってくれますか?」


 僕がまだ幼かったから良かったのだろう。妹さんはしゃくり上げながらも僕の手を握ってくれた。そして、僕は妹さんを連れて魔法師の所に転位した。


 毛布に包まった妹さんを見た魔法師は、


「カリーナ、良かった。無事だったか!」


 と駆け寄り抱き締める。妹さんも、


「サーパ兄さん、怖かった。この子が来てくれなかったら私……」


 と言って魔法師に抱きついて震えていた。取り敢えず再会出来たし良かったね。

 僕とラターシャお姉さまは二人を連れてラターシャお姉さまの離屋敷に転移した。





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