第27話 個人授業と魔法師

 それから皆が魔力制御の訓練をしている場所から少し離れた場所に連れて来られた僕。

 ラターシャ先生は僕に、


「コルくん、もし差し支えなければ私にも漢字魔術を教えて欲しい」


 と頼んできた。僕は勿論直ぐに了承した。ただ、皆の前だと気まずいらしいので、晩御飯を食べた後に皆に内緒で個人授業をする事になった。


 そして訓練を終えて僕は兄上と一緒に汗を流して、女性達も汗を流して暫く休憩。晩御飯前に父上が帰って来たので皆で出迎えた。


「お帰りなさい、父上」


 兄上がそう言うと父上は笑みを浮かべて僕達を見た。そして、


「まだ確定じゃないがモリノミは降爵される事になりそうだ。取り敢えずは二人とも処刑は免れたけど、嫡男のハラードを伯爵にして様子を見る事になった。ただ、ハラードもまだ9才だから後見人としてバーモン侯爵がつく。あの二人は取り敢えずは鉱山送りが有力候補になってる」


 と聞きたかった事を教えてくれた。うーん、しかしハラードが伯爵って大丈夫なのかな?


「父上、所領はどうなったんてすか?」


「ああ、ソレを言うのを忘れていたな。モリノミの領地は王国直轄地になる。ハラード伯爵はバーモン侯爵領の更に南に凡そ五千平米の空き土地があるからソコの開拓からだな。まあ成人するまではバーモン侯爵領に屋敷を与えられるそうだが」


 なるほど、所領は没収されたのね。それならもうウチにナンクセつけには来れないな。と僕も甘い考えを持ってた様です。学園に来るのを忘れてました。


「ボトル、降爵したとはいえ今度はハラード自身が伯爵となり、立場的にはヤツの方が上になる。学園に入ったら気をつけろよ」


「はい、父上」


 そうだったー。学園があったよ…… すっかり忘れていた。うん、兄上サポートしますからね。僕は心の中でそうエールを送った。


 それから晩御飯を食べてからラターシャお姉さまの住むはなれに向かった。そしたらラターシャお姉さまが外に行こうと言う。僕は夜に家を出た事がないからワクワクして


「行きましょう! デートですね」


 と普段は絶対言わない軽口を言ってしまった。そしたらラターシャお姉さまの鼻からポタポタと赤いモノが…… 


「コ、コルくん。デ、デートじゃないからね。少しだけ待ってくれる」


 そう言うとラターシャお姉さまは部屋を出ていき数分して戻ってきた。ゴメンナサイ。


 それから屋敷を出た僕達はラターシャお姉さまの転移魔術で広い草原に来た。ここはカインズ公爵領内にある自然保護区域で、奥の方には薬草が群生している場所らしい。僕も初めて来たのでラターシャお姉さまにそう教えてもらったんだけど。


 そこでラターシャお姉さまに初歩から初級魔術を教えた。流石さすが、ラターシャお姉さまでした。全てを難なく覚えてしまいました。その理由が、


「私は長年、魔力制御、魔力操作の訓練をしてきたから、人よりは覚えるのが早いと思う」


 との事だった。僕は凄いと思い素直にそう言うとラターシャお姉さまに反論されてしまった。


「いや、私は年月という長い時間をかけて得たモノを僅か七才で私並みに魔力制御、操作を出来ているコルくんの方が凄いよ。保有魔力量は既に私を超えているし」


 自分では実感が無いからそう言われてもピンと来ないけど、褒められて嬉しい。僕はハニカミながら明日は中級魔術を教えますねと言った時だった、大きな水球が僕達二人を目掛けて飛んできた。


 咄嗟に僕は防御魔術を張った。僕の張った防御魔術に水球は当たって砕けた。そして、確かに今までいなかった筈の場所に一人で立つ男がいた。


 あの兄上とハラードの模擬戦の時にいた魔法師だった。


「済まないな、お前達には何の遺恨いこんもないが、ここで死んで貰う。今度は防げないぞ!」


 そう言うと男が魔力を練り上げる。


 僕は……

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