第26話 明けて翌日

 昨日は祖父おじい様の子供の頃に戻ったかのような姿を見れたけど、今日はさすがにそんな事もなくお仕事に行かれた。

 父上は当事者としてモリノミ公爵の尋問に立ち会うそうだ。帰ったらまた詳しい事を教えてくれるらしい。

 どうも父上は僕が魔法を防御した事で一人前の男として認めてくれたようだ。


 それから僕と兄上、マアヤ、マキヤ、マラヤ、何故かミレーお姉様も来てラターシャお姉さまの教えを受ける。

 午前中は座学になる。


 ここで少しだけ補足すると、僕がいる王国の名前はラターシ王国。建国してから七百十八年になります。現国王はサンテミリⅡ世です。

 王都の西がカインズ公爵領で、東がモリノミ公爵領。北は現在は王国直轄地で、南はバーモン侯爵領です。王都は直径凡そ三十キロメートルと小さいけど、東西南北の各領地は凡そ直径八十キロメートルあります。何故王都よりも広いか?


 それがラターシャお姉さまからの質問だったので、補足を終えて座学に戻ります。


 兄上がラターシャ先生の質問に答える。


「はい、何故なら王都を守る最終防衛地点だからです」


 兄上の答えに満足そうな顔をするラターシャ先生。


「その通りだ。ボトル、良く分かっているね。王都に攻め込まれた時点でこの国はもう負けていると考えた初代国王は、当時いた五人の息子のウチ、次男をカインズ公爵に、三男をテール公爵に、四男をタッカン公爵に、五男をモリノミ公爵として、東西南北に領地を与えた。残念ながら、テール、タッカン公爵は今から百五十年前に跡継ぎが出来ずに無くなってしまったが。養子をとるのを当時の王国法が禁じていた為にそうなった」


 などの座学をラターシャ先生から僕達は学んでいた。そして、午後からは魔術、体術の訓練に入る。が、何故か僕はラターシャ先生の横に立っていた。


「さて、本日は魔術をメインに教えていこうと思うのだが、聞くところによれば皆はコルク先生から魔術を教えてもらったそうだな。そこで、今日はコルク先生から教わった魔術を先ずは見せて欲しい。それによって皆に合った訓練方法を考えたい」


 ラターシャ先生はそう言って僕を促して的が皆に見えるように移動した。但し、初級攻撃魔術を覚えられなかった人もいるので、取り敢えず初級攻撃魔術を覚えた人が的に向かって魔術を打った。 


 先ずは兄上。


火球ひとだま」「風弾びーびーだん」「光弾まめきゅう」 


 立て続けに魔術を的に向かって打った後にラターシャ先生を見る兄上。先生は、


「コルク先生に負けず劣らずの威力があるね。魔力制御が上手に出来ている」


 と兄上を褒めて下がらせた。次はマアヤ。


水球よーよー」「石礫みずきり


 マアヤも二つの魔術を披露した。先生は、


「どうやら土よりも水の方が相性が良いみたいだね。でも土も魔力制御の訓練次第でもう少し威力が上がると思う」


 次にマラヤ。


風弾びーびーだん」「光弾まめきゅう


「うん、どちらも良いね。制御も上手く出来てるし、今後の訓練次第で他の属性も直ぐに出来る様になるよ」


 こんな感じでマキヤとミレーお姉様以外が魔術を放ち、先生がそれに意見を述べた。そして、僕を除いた全員に魔力制御が上手になるように、一人一人違うやり方を教えていった。

 

 特にマキヤとミレーお姉様は制御が苦手なので、丁寧に指導していた。マキヤは病み上がりでもあるので基礎的な訓練方法を。ミレーお姉様には剣術で例えを言いながら分かりやすく。

 全員に訓練方法を伝えた先生は皆に言った。


「先ずは初級魔術の全てを全員が使える様にします。魔力制御の問題だと分かったので、この訓練を続けてコルク先生と同じくらい、皆が魔力制御を上手に出来るようになりましょう」


 ラターシャ先生は皆にそう言って訓練を続けた。僕はその横に立って先生が皆を指導している様子を見ていた。


 先生、僕も何か教えて欲しいです…… 


 


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