第19話 お姉様も一緒
『良いんじゃね』
だった。軽い、軽いよ。
『初級だけなのは何故かしら?』
そう聞いてきたんだ。僕は理由を言った。
「はい、初級でも皆が使う魔術よりも威力が高くて、また初級なら漢字を覚えて意味を知る事も楽に出来ると思ったからです。説明もしやすい簡単な漢字が多いですし」
『そう…… うん、コルクがそう思うなら良いんじゃない。それで、それぞれ皆の得意魔術は違うけれどソコは考えてるの?』
「はい。先ずは初歩魔術を皆に覚えてもらいます。それからそれぞれの得意な初級魔術を覚えて貰おうと思ってます」
二人はそれに頷いて肯定してくれた。そこに兄上から言葉が発せられた。
「ひいおじい様、ひいおばあ様。前回は恐れから逃げ出し、大変失礼しました」
あっ、恐れからは認めちゃうんですね、兄上。
『良いのよ、ボトル。ハッキリと見えなかったなら恐れるのも当たり前だから』
『その恐怖を克服して、今ここに立っているんだから、お前は強いんだ。誇りを持って良い』
二人の言葉に兄上は感極まったようで少し涙目になっていたけど、涙を流す事なく僕に向けて言った。
「コルク、ミレーにも教えて良いか?」
そうだ、ミレーお姉様を忘れていた。僕はハッとして兄上に言った。
「御免なさい、兄上。ミレーお姉様を忘れていました。今すぐ迎えに行きましょう! さあ僕の手を握って下さい!」
「えっ?」
と言いながらも僕の手を取る兄上。僕は皆に
「すぐ戻ります」
と声をかけて魔術を使用した。
「
そして兄上と僕はミレーお姉様の家の門前に立っていた。兄上が
「えっ? えっ!?」
とか言ってるが慌てている僕はそのまま門扉を叩く。すると執事のセバスさんが顔を出してくれた。
「おや、お早う御座います。ボトル様、コルク様。ご一緒にいらっしゃるとはお珍しいですな? 馬車が見当たりませぬが……」
「お早うございます、セバスさん。ミレーお姉様はもう起きておられますか? それと、ミランダ様にもご挨拶したいのですが」
ミランダ様はミレーお姉様の母上で、平民だったけど陛下のお手つきで第四夫人になられた方だ。ミランダ様はウチの母上と仲が良い。
「はい、お二人共に起きて朝食もお済みになり、食後のお茶を飲んで寛がれております。ご案内しますね」
そう言ってセバスさんが家の敷地に僕達二人を招いてくれた。兄上と僕は付いていく。途中で兄上から小声で文句を言われた。転位なんて魔術を使用するなら事前に教えてくれと。兄上、ゴメンなさい。慌ててた僕は説明を
そして、お二人がおられる部屋に着いた。セバスさんがノックをしたら中から返事があった。
「はい、何かしら?」
「奥様、セバスでございます。ボトル様とコルク様がお見えです。お通ししてもよろしいでしょうか?」
セバスさんがそう言うと同時に扉がバーンと開いた。そしてソコには満面の笑みを浮かべたミレーお姉様がいた。
「ボトル、コルク、お早う。朝早くから訪ねてきてくれるなんてどうしたの?」
「ミレー、お早う。いや、実は……」
兄上が言いよどむので僕が話を引き継いだ。
「ミランダ様、ミレーお姉様、お早うございます。実は少しお願いがあるんです」
「あらあら、ミレー。嬉しいのは分かるけど貴女がソコに居たらボトル様もコルク様も部屋に入れないわ。お早うございます。ボトル様、コルク様。さあ、お話は部屋に入ってからお伺いしますから、どうぞ中にお入りください」
ミランダ様に促されて兄上と僕は部屋に入って椅子に腰掛けた。そして、セバスさん以外の使用人達を部屋から出してもらった。
「あら、随分と用心してるわね? お話を伺うのが怖いわ〜」
ミランダ様が冗談めかしてそう言う。僕は今から時間があるならカインズ家に一緒に来て欲しいと全てを言わずに頼んだ。その僕の言葉にセバスさんを見るミランダ様。
「午後からお茶会に出席予定ではありますが、欠席なされても問題ないかと思います。何より、カインズ公爵家に招かれてと言うなら、お断りするのにも何の支障もございません。僭越ながら私から先方にお断りを申し上げておきます。お嬢様とご一緒にカインズ公爵家に安心してお出かけ下さい」
「そう。分かったわ。セバス、よろしくお願いね。それじゃ、ボトル様、コルク様。ご一緒致します。服装はこのままでもよろしいのかしら?」
「はい、大丈夫です。セバスさん、僕達はこの部屋から直ぐに居なくなります。何か良い言い訳はないでしょうか?」
「ほう! コルク様はもしや【テレポート】の魔術を?」
「はい。そうなんです。けれど余り
「分かりました。それでは私が四人様を連れてテレポートしたと言う事に致しましょう。私もテレポート魔術を使用できますので」
「それでよろしくお願いします」
僕はそう言うと三人と手を繋いで家の地下室に転位した。
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