第17話 兄上も婚約決定

 こうして、僕は祖母おばあ様と母上に老化防止びまじょ魔術を、マアヤとマキヤに成長抑制ロリータ魔術をかけて、契約ほしょう魔術で全てを忘れて貰った。


 皆が何故地下室に居るのか不思議そうにしていたのだが、全てを見ていた曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様が気を利かせて皆に語りかけて下さった。皆は姿が見えないようだ。


『皆がコルクを連れて会いにきてくれて嬉しいよ』


『キャラ、これからもコルクの為になる事はマルコやヴァンを気にせずにドンドンやりなさい』


 曾祖母ひいおばあ様、そこに僕の意見は?僕はそう思ったけれど黙っていた。


「はい、お義母様」


『リーン、貴女もよ』


「ええ、分かってますわ。お祖母様」


 しかし僕には二人が見えているから違和感が半端ない。だって曾祖父ひいおじい様も曾祖母ひいおばあ様も見た目はマアヤくらいの年齢だからね。


『マアヤ、マキヤ、マラヤ、コルクをお願いね』


「はい、私達は生涯コルク様を支えます」


『あら、婚約者になったんだから【様】は要らないわ。呼び捨てか愛称で呼んであげてね』


「「「はい!」」」


 そして、マアヤとマキヤはコルクと呼び、マラヤがコルくんと呼ぶようになった。


 僕達がゾロゾロと地下室から出ると、祖父おじい様、父上、兄上が揃って待っていた。そして、祖父おじい様が祖母おばあ様を問い詰める。


「キャラ、帰ってくるなり挨拶もせずにリーンまで連れて地下室に行ったのは何故なんだ? それにマアヤに良く似たこの達は誰だい?」


「あら、マルコ。女にはヒミツがあるモノなのよ。根掘り葉掘り聞くモノじゃないわ。って、大した事じゃないのよ。お義母様に帰ったら何をおいても直ぐに地下室に来るように言われてたのよ。この達は二人ともカーライル伯爵のむすめで、マアヤの妹よ。今日からコルクの婚約者に決まったから我が家で一緒に過ごすわ」


 祖母おばあ様がそう言うと、三人の男性陣はビックリした顔をして父上が代表して言葉を発した。


「えーっと、母上。嫡男のボトルですらまだ婚約者が居りませんが、コルクは既に三人もと婚約が決まったと言う事ですか? リーンもそれを承知したと?」


「そうですよ、何か問題があるかしら? ヴァン」


「いや、この公爵家は俺が当主だと思っていましたが、実は母上が当主だったんですね?」


 皮肉交じりでそう言う父上の横で祖父おじい様が首を横に振った。そして、祖母おばあ様の怒りの雷撃が父上に落ちる。


「どうやら私は育て方を間違えたようね! ヴァン、今からでも遅くはないわ! その意味の無い自尊心を叩き壊してあげるわ!」


 どうやら父上の物言いは祖母おばあ様の逆鱗に触れたようだ。

 そう言えば祖父おじい様がことある度に仰っていたな。公爵家当主の勤めとは領地に住む住人の安寧な暮らしを守る事だって。それ以外の事は何も当主としては関係ないんだって。

 父上もそれを重々承知していた筈なのに、仲間外れにされたと思って年甲斐もなく拗ねてしまっただけだろう。出した言葉は不味かったけど。

 左の耳を祖母おばあ様に、右の耳を母上に引っ張られて連行されている父上を同情しながら見送った僕達。そこで兄上が僕に祝福の声をかけてくれた。


「婚約、おめでとう! コルク。七才で三人も婚約者が出来るなんてコルクは凄いな!」


「兄上、有難うございます。でも、兄上も夏にはご婚約でしょう?」


「何だ、コルクは知っていたのか。そうなんだ、ミレーとの婚約を夏にする事がようやく決まったんだ。来年からは学園に行くから一緒に登校する事になった」


「ミレーお姉様なら僕も嬉しいです。兄上、おめでとう御座います」


 ミレーお姉様は実は第六王女様だ。兄上と同い年で、カインズ公爵領の中に土地を構えて住んでいる。第六の数字から分かるように、国王陛下のお手付きでお産まれになったので、陛下からの認知は頂けたけれど王宮に住むのはダメだと王妃様と第二、第三夫人から言われて、困った陛下が祖父おじい様に泣き付いてきて、ウチの領地に居を構える事になった。

 そんなお姉様だが、天真爛漫で魔術はそれ程でもないが、刀術に出会って今も絶賛修行中だ。兄上とも仲良く稽古をしておられる。

 そして、僕にも優しく接して下さる気さくな方だ。僕は心から兄上におめでとうともう一度言ってから、三人の婚約者と一緒に僕の部屋に向かった。

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