第16話 女性達の目が怖いです

 そして、治ったばかりだが、元気一杯になったマキヤと、ニコニコ笑顔のマラヤも一緒に家に帰る事になった僕は馬車の中で三姉妹に挟まれていた。


「コルク様、子供は何人と考えておられますか?」


 いきなりなマキヤの質問に思わずブッと吹き出してしまう僕。それを心配して背中をさするマアヤ。そして、マラヤが負けじと言う。


「わ、私はコルク様との間なら何人でも産みます!」


 マラヤ、八才の女の子がそんな事を言っちゃダメだよ。僕はまだ七才だし、そういうのは大人になってからだからね。僕は心の中ではそう言ってるけど、口に出しては何も言えなかったんだ。

 そこで祖母おばあ様が助けてくれた。


「マキヤ、マラヤ、コルくんはまだ七才だからその話はせめて成人するまでは待ちなさい」


「「はい、申し訳ありません。嬉しくてつい······」」


 まあ、喜んでくれてるなら良いか。イヤイヤ来てるならそんな事を言ってくれないだろうしね。でもマアヤ、そんなに力を込めて僕の手を握るとさすがに痛いよ。だから少しだけ力を緩めてね。僕はそう思いマアヤの顔を見てニッコリ笑うと何故か更に力を込めて手を握られてしまった。痛いけど我慢しよう。ここは男が我慢する場面だと思うから。


 そして、皆で談笑しながら馬車に揺られて家に帰ってきた。

 祖母おばあ様は直ぐに母上を呼びに行き、祖父おじい様と父上からの質問には一切答えずに、有無を言わさず僕と三姉妹共々地下室に入った。中から鍵をかける念の入れようだった。

 そして、僕を見て言ったんだ。


「さあ、コルくん。何で連れて来られたか分かるかしらね?」


 僕は宙にいる曾祖母ひいおばあ様と曾祖父ひいおじい様を見て、二人がすまなさそうに頷いているのを見て確信した。


「はい、祖母おばあ様。老化防止魔術と、成長抑制魔術ですね」


「さすが、コルくん! 私の言いたい事を先読み出来るなんて素晴らしい孫だわ!」


 祖母おばあ様だけじゃなく、母上、マアヤ、マキヤ、マラヤの三姉妹も興奮している。


「コ、コルくん! 老化防止って本当なの!?」


「コルク様! 成長抑制魔術なんてあるのですか!?」


 僕は興奮している皆に落ち着いて言う。


「母上、それに三人も、落ち着いて下さい。今から説明するから。母上、あの【魔術大全の書】に載っていました。祖母おばあ様は曾祖母ひいおばあ様から聞いたんですよね?」


「ええ、そうですよ。コルくん」


「それではその魔術が永遠では無いこともお聞きしましたか?」


「ええ、それも聞きましたよ」


「そうですか。それなら、良かったです。老化防止魔術も成長抑制魔術も一人につき一回しか使用できません。老化防止魔術は現在の状態を二十年維持してから、徐々にまた老化が始まります。成長抑制魔術は、二十二才までの女性、二十五才までの男性の五年~十五年の間で成長を抑制出来ます」


「「「「す、凄い! そんな魔術が!?」」」」


 祖母おばあ様以外の皆は驚いているけど、そんなに凄いかな? 前世の記憶に寄れば美魔女と呼ばれている人達はウソって言う年齢だったりしたけど。

 僕がそんな事を思っていると、祖母おばあ様が皆に聞かせる様に喋りだした。


「さて、皆をここに連れてきたのはこの魔術をカインズ家の秘匿とする事を誓って貰う為です。私とリーンには老化防止魔術を、マアヤとマキヤは成長抑制魔術をコルくんにかけて貰います。マラヤはコルくんと一才しか違わないからそのままでね。大人になったら三人は老化防止魔術をかけてもらいなさい」


 祖母おばあ様の言葉に皆が、


「「「「はい!」」」」

 

 と返事をした。そこで僕は皆に提案をした。


「秘匿すると言うことは、ここにいる人だけの秘密と言うことですよね。それなら、契約魔術も合わせてかけさせてもらっても良いでしょうか?」


 母上が僕に聞いてきた。


「コルくん、契約魔術ってどんな魔術なのかしら? 私は痛いのはイヤだわぁ」


 母上、僕が母上に痛い事をする訳ないじゃないですか。僕は説明した。


「契約魔術は内容を色々と変えられるのですが、今回は僕が皆に老化防止魔術や成長抑制魔術をかけた事を忘れさせる契約をしようかと思います。知らない事は誰も喋れませんし」


 僕の説明に皆が納得してくれた。そして、僕は祖母おばあ様と母上に老化防止魔術をかけて、マアヤに成長抑制魔術十三年、マキヤに五年でかけてから、マラヤを含めて契約魔術を実行した。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る