第15話 忠誠を誓われるそして、

 伯爵家一同も跪いて僕に頭を下げて言う。


「私達、カーライル伯爵家はカインズ公爵家次男のコルク様に生涯にわたる忠誠を誓います!」


 ちょっと待ってー。それは困るよ。父上というか、カインズ公爵家に誓って貰わないと。僕個人に誓われても困ります。


 僕が困った顔をしていたら祖母おばあ様がカーライル伯爵に言った。


「コルくん個人に忠誠を誓うと言うのね、伯爵」


「はい、勿論これまで通りにカインズ公爵家にも忠誠を誓いますが、コルク様には絶対の忠誠を誓います!」


 祖母おばあ様は伯爵の返事を聞いて頷いて言った。


「そう、それなら良いわ。マアヤが行った事も不問にしましょう。でも、只でという訳には行かないわよ」


「はい、キャラメーナ様。勿論でございます。私が今から死にますので、嫡男のハワードに後を継がせます。それで宜しいでしょうか?」


 ちょ、ちょっと待ってー。実質的には被害が無いから死ぬ事はないですよ。僕が伯爵の言葉にアワアワしていたら祖母おばあ様が返事をした。


「あら、死ぬ必要はないわ。寿命迄か仕事が出来なくなるまでは伯爵で居なさい。それよりも、マアヤの妹は何才なの?」


「はい、上の先程コルク様に治して頂いたマキヤが十二才で、下のこちらに居りますマラヤが八才になります」


 伯爵の返事に祖母おばあ様が言った。


「それじゃ、上の妹のマキヤちゃんをウチの嫡男のボトルの婚約者に、下の妹のマラヤちゃんをコルくんの婚約者にで良いかしら。マアヤはこれまで通りにコルくんに専属のメイドとしてついていて貰うわ。そして、三人の姉妹はウチに来て貰う事になるけど、それを了承する?」


「ね、願ってもない事です!」


 そう言って頭を下げる伯爵と夫人。しかし、そこにマキヤから待ったが出た。


「私が生涯を捧げるのはコルク様以外におりません。申し訳ないですが、このお話は無かった事にして下さい」


「あら、それは困ったわね。コルくん、どうする? それなら下の妹ちゃんはどうなのかしら?」


 問われたマラヤは顔を赤くして僕を見ながら言った。


「わ、私はコルク様とご一緒出来るならそれに勝る幸せはありません」


 うん、君は今初めて僕を見たんだよね。そんなに知らない僕の事をそんな風に言ってくれるのは嬉しいけど、大丈夫なのかな? 僕はそう思ったけど、賢明にも黙っておいた。


「まあ、コルくん。モテル男は辛いわね。でもねえ、マキヤちゃんとでは年齢がねぇ······」


 祖母おばあ様が少し悩んでいたら、


「えっ、はい。うそ! そうなんですか? はい、分かりました」


 また祖母おばあ様が突然に独り言を言い出した。恐らく曾祖母ひいおばあ様からの言葉に違いないだろう。アレの事を教えたんだなと僕には分かった。


 祖母おばあ様は決然とした表情になり、伯爵と夫人に言った。


「カーライル伯爵家の三姉妹はカインズ公爵家次男、コルクの妻となります。三姉妹全員です」


「ハ、ハハアー」


 祖母おばあ様の威厳ある言葉に雷に打たれたかの様にひれ伏した伯爵と夫人。そして、その言葉に三姉妹は嬉しそうに涙を流して抱き合っていた。


 って、僕の気持ちは? 祖母おばあ様?


 今はとてもそう言える雰囲気ではないので言わなかったが。


「三姉妹はこのまま私達と一緒にカインズ公爵家に入ります。それで良いかしら?」


「「「はい!」」」


 三人の返事がキレイにハモる。僕はハハハと力無く笑って了承した。父上とボトル兄さんが何と言うか今から怖いです。

 それを言うなら母上も何と言うだろうか?それに、先程から祖母おばあ様の射るような視線も怖いです。帰ったら地下室に逃げ込もうと思った僕は、祖母おばあ様に先手を打たれた。


「コルくん、帰ったら先ずはこの三人と私とリーンを、連れて地下室に行きましょうね」


 ニッコリと目が笑ってない祖母おばあ様の笑みにひきつった笑みで僕は『はい』と返事を返したのだった。

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