第14話 治したよ、冷たい視線は誤解です

 さてと、これで落ち着いてマアヤの妹を診る事が出来る。僕は祖母おばあ様と一緒に部屋の中に入った。マアヤの妹はベッドの上で座ったまま僕達に頭を下げて挨拶した。


「先程のお声が聞こえてきました。初めまして。カーライル伯爵家の次女で、マキヤと申します。このままで大変失礼なのですが、どうかご了承ください」


「あらあら、良いのよ。大変だったわね。今から診させてもらっても良いかしら?」


「はい、よろしくお願いします」


 マキヤはそう言って服を脱ごうとする。慌てて止める祖母おばあ様。


「服は脱がなくて良いのよ。そのまま楽な姿勢でいてちょうだい」


 その言葉に不思議そうな顔をするマキヤ。そして、


「でも治癒師だったあの男性はいつも診る時は服を脱げと言っておりましたが」


「まあ、とんだ偽物だわ!」


 祖母おばあ様が憤慨ふんがいする。そして、そのまま魔術を唱えた。


「ディアグノシス!」


 そして診ていた祖母おばあ様の顔が曇る。そして、言い辛そうに言った。


「ご免なさい。貴女の病気は私の最高の治癒魔術を持ってしても完治出来ないわ。症状を抑える事は可能だけれど·······」


 その言葉を聞いたマアヤが泣き出し、マキヤは微笑んで諦めた顔をして言った。


「やっぱりそうなんですね。私もそうじゃないかとは思ってました。不治の病、【カイセンナクルミ病】ですよね?」


「ええ、そうよ。これを治せる人は居ないと思うわ」


 祖母おばあ様がそう言うと泣き崩れるマアヤと伯爵。そしていつの間にか来ていた伯爵夫人と下の妹がいた。僕は祖母おばあ様に言った。


祖母おばあ様、僕が視ても良いですか?」


「あら、コルくん。診れるの?」


「はい、例の書物で学びましたから」


「うーん、でもねぇ······」


 祖母おばあ様は悩みに悩む。その時に祖母おばあ様の顔がハッとしたようになって、


「はい、はい。いえ、ですが······ はい。分かりました」


 と何かと対話をしているような様子になった。そして、僕を見て言った。


「コルくん、義母おかあ様からのお言葉よ。ちゃんと治してあげなさいですって」


 曾祖母ひいおばあ様からの言葉が祖母おばあ様に届いたようだ。でも、霊体を見れなかった祖母おばあ様が、何故言葉だけの曾祖母ひいおばあ様を信じたんだろう。

 僕がそう考えていたら、


「コルくんには言っても良いらしいから言うと、私もリーンもお声だけはいつも掛けて頂いてたのよ。特にリーンが嫁ぐとなった時にはかなりご尽力いただいたのよ」


 と教えてくれた。だから、母上は姿が見えた僕をズルいと言ったのか。疑問が解けた。

 

 まあ、それは置いておいて。今からマキヤを治して上げよう。僕は魔術を心のなかで唱えた。


完治コンチ!』


 僕の右手から出た小さなビー玉位の光の玉がマキヤの額から体の中に入る。入った瞬間にマキヤが、身悶えを始めた。


「あ、ああー、こ、これは、イヤ、ダメなの! ダメ、ダメ、アーーーっ!」


 そう言ってバタッとベッドに仰向けに倒れて少しエッチな息遣いでハアハアと言っている。


 しまった、説明するのを忘れてた。祖母おばあ様をはじめ、皆の冷たい視線が僕に向かう。そして、マアヤが言った。


「コルク様、説明して頂けますか?」


 顔が少しだけ怖いマアヤがそう聞いてきたので僕は慌てて説明した。


「あ、あのね、マアヤ。病の治癒魔術は治りにくい病を、治そうとする力が強ければ強い程、患者の体に痛みを感じさせるらしいんだ。そこで、この魔術を作られた方はその痛みを心地好さに変えられたそうなんだけど、病が重いほど快楽になるそうなんだ······」


 僕の説明が終わるとマキヤが言った。


「お姉さま、私。治ったみたいです!」


「マ、マキヤ、本当に!?」


「はい! 息苦しかった呼吸も、重く怠かった体も今は何も感じません!」


 そう言ってベッドから降りたマキヤは僕の前まで来て、僕の両手をとって言った。


「コルク様、有り難うございます。私、生涯を貴方に捧げます!」


 いやいや、マキヤ。何を言い出すのかな。僕は困った顔で祖母おばあ様と伯爵家の人達を見た。すると、

 

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